もし、日本が北朝鮮や中国、ロシアと武力衝突する事態になれば、相手は高性能レーダーと迎撃ミサイルがセットになった陸上イージス施設を真っ先に攻撃してくるはずだ。
そのとき、はたして基地周辺の住宅や学校はどうなるのだろうか?
導入経費は数兆円規模にまで膨張する
さらに懸念されるのは、巨額の予算だ。
当初、陸上イージスの導入経費は2基で約1600億円とされていた。ところが計画が具体化するにつれてどんどん経費が膨張し、現在では約6000億円とされている。しかし、レーダーや関連装備をグレードアップするたびに加算が続き、防衛関係者の間では、2兆円程度になると指摘されている。長期的な維持費や広義の関係費用を含めれば、数兆円に膨張することは確実だ。
日本が高値の防衛装備をどんどんアメリカから買わされている構図を、南村氏は高級外車の例にたとえる。
「平均的なサラリーマンが背伸びして外車を購入した後、セールスマンの巧みな口車に乗せられてどんどん高額な外車に買い替えさせられた挙句、通常の暮らしが立ちいかなくなるようなものだ」
繰り返すが、日本の防衛力の強化と拡大は急務である。
そのために必要なのは、陸上イージスのような装備に濫費することではない。
もっと賢く予算を使い、効果的な抑止力を持たなければならない。
「文藝春秋」10月号に掲載されている南村氏のレポート「亡国の陸上イージス」は、日本の防衛力強化のために何が必要なのかを詳細に論じている。
【文藝春秋 目次】<総力特集>日韓断絶 藤原正彦 佐藤 優/<特別寄稿>村上春樹 「至るところにある妄想」/<特集>がん医療の新常識
2019年10月号
2019年9月10日 発売
定価960円(税込)