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2019年のスワローズを“スポーツ紙の見出し”で振り返る【後編】

文春野球コラム 日本シリーズ2019

2019/10/24
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村上宗隆に救われ、奥川恭伸に希望を見る2019年

 さぁ、ここからは「村上ウィーク」の始まりだ。17日の対中日戦で「村上プロ初2発 清原並ぶ点83」を皮切りに、21日の対広島戦で「村上 清原も超えた84打点」、22日は「中西 清原以来だ 村上30号」。27日の対DeNA戦では「村上 清原に並んだ31号 中西に並んだ86打点」と続く。誰か、今すぐ村上に国民栄誉賞をあげてくれ!

 一方、山田哲人も負けてはいない。14日の対DeNA戦での「山田30号」を筆頭に、18日の対中日戦では「履正社OB山田31連続盗塁成功」、23日の対阪神戦ではついに「33連続盗塁成功 山田日本一」の文字が躍る。昨年8月26日以来、33連続盗塁成功という日本記録を達成したのだ。30日には「山田 日本新シーズン32連続盗塁成功」とあり、翌31日には「山田『ここぞ』10回決勝3ラン」と続く。バットでも、足でも魅せるミスタースワローズなのだ。これで8月が終了。首位・巨人とのゲーム差は20・5ゲーム。我々は異空間を生きているかのような真夏の夜の夢が続いた。

 辛い日が多い夏の日ではあったが、9月4日は「YM砲記念日」と名づけたい。「村上最強10代」と「山田200号サヨナラ満弾」が並んで大見出しとなっている。村上は清原和博氏を超える32号、中西太氏を超える90打点を記録。山田は通算200号をサヨナラ満塁ホームランで決めたのだ。

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 さて、時代の一歩先を行く我々ヤクルトファンは、9月に入るとすぐに2020年を生き始める。覚悟はしていたけど、9月8日付では久しぶりの一面。「小川監督進退伺 宮本ヘッドは退団」という恐れていた現実を突きつけられた。このときの衝撃は文春野球で書いたけど、今でも悔しくて、悔しくて仕方がない。

 また、この日の中面にも衝撃的な記事が掲載される。「ヤクルトV戦士 畠山引退」。こちらも、覚悟はしていたがやっぱり辛い出来事だった。記事にある「寂しさや悔しさはない。ボロボロになるまでできたことは幸せ」というひと言に救われる思いがした。10日付で正式に「館山 畠山引退発表」とあり、翌11日付では小川監督が正式に辞任を表明。「そういう世界」という見出しが躍っている。……勝負の世界は非情だ。

 16日付では「寺原今季限り引退」とある一方、21日付には「高津新監督内定」と報じられた。23日付も、忘れられない選手の引退記事が掲載された。「こんなヤツはなかなかいない 三輪ヘッスラで引退」。降雨コールドで勝利した後の雨中の引退セレモニーとビショビショになりながらのヘッドスライディング。三輪正義選手、僕はあなたを忘れない。

 9月28日に全日程が終了。首位・巨人と何ゲーム離れたのかは記録を紛失してしまったため、よくわからない。近々、「記録がないため19年シーズンは無効」という閣議決定がなされることだろう。同時に来年から宮本ヘッドも公人ではなく私人と閣議決定される見込み。

 さて、19年シーズン、最後の最後に大ニュースが飛び込んできた。そう、10月17日に行われたドラフト会議である。「ヤクルト 奥川」! 二つの固有名詞の羅列なのに、どうしてこんなに夢と希望がダダ漏れしてくるのだろう? 我々ヤクルトファンにとってはファンタジーの世界であり、空想上の生き物だと思っていた「甲子園準優勝投手」という存在が、荒木大輔以外にこの世に実在するのだということを初めて知った。高津監督ありがとう! 2020年のスワローズには、やはり、「希望」という言葉しか浮かばない。

夢と希望がダダ漏れしてくる「ヤクルト 奥川」 ©長谷川晶一

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