以前ロンロンこと王柏融選手のコラムを書かせていただきました、河野万里奈です。プロ入り9年目の歌手、自称「西川遥輝選手らと同期」です。まさか、文春野球日本シリーズ第5戦を任せていただけることになるとは。ただの野球ガチオタクであるわたしに、できることがあるだろうか。頭を悩ませた結果、一つ、大切な授かりものが思い当たりました。それは、私が人生で初めて取材をさせていただいた「関西学院大学の先輩」であり「北の鉄腕」からの言葉。感謝を込めてつづらせていただきます。
「怖い人」疑惑があった宮西投手への人生初取材
皆様に問いたい。「宮西投手のイメージはどんなものですか?」。わたしにとっての第一印象は、関西学院大学野球部時代のプロフィールだった。ニックネーム欄に「宮西尚生様」、イチオシ選手「おれ」などと個性が大爆発していたものだから、忘れられない。その上、杉谷選手からは「目が合えばビンタ」「尼崎のジャイアン」などという証言も。無礼を承知で正直に告白する。「もしや怖い人なのでは……」と思っていた。そう、あの日までは。それは今年8月14日、東京ドームでファイターズ主催試合が行われた日のことだった。
人生初の取材。する側の気持ちは容易に想像できる。では、される側の気持ちは? 取材経験のない、ましてやプロの記者でもない歌手に、試合前の大切な時間を割いて話をする。億劫に感じてもしかたない。しかしどうだろう。宮西投手の第一声は「後輩やろ? 記事読んだことあるから知ってるで!」。東京ドームの屋根が吹き飛びそうなほど、鮮烈な笑顔だった。
ベンチに並んで座り、いくつか質問をさせていただく。全部で5つほどだったか。さぞ拙い取材だったであろう。しかしそこには少年のように無邪気な微笑みの宮西投手がいた。最も驚いたのは、取材を終えて「試合前にありがとうございました! がんばってください!」とお伝えした時の「うん! がんばってな!」と言う笑顔。応援したつもりが、されていた。これから夏の天王山に立ち向かう戦士が、まだ小さき歌手を応援してくださるとは。強きものは優しきもの。体は鋼、心は綿。「怖い人」などどこにもいない。これが「宮西尚生様」か。真髄を見た。
大切なのは「楽しむこと」
「長く続けるための秘訣はなんですか?」。最初にこの問いを持ってきた理由は、わたし自身が歌手を続けることに高い壁を感じていたからであった。「楽しむことかな?」。返ってきた回答はこうだった。「ピンチでマウンドに呼ばれるのは勿論しんどいわ~と思うし、打たれたら忘れられへんくらい悔しいけど……」。宮西投手は微妙な言葉のニュアンスに顔をしかめながら、続けた。
「抑えた時の周りの安堵した表情や歓声は、何にも代えがたい素晴らしさがある」「それが楽しさ」「その感覚を忘れずに大切にすること」。関西学院大学で培った英語力を駆使して解釈するに、“fun”ではなく“excite”。単純な「楽しさ」ではなく、真剣勝負でしか得られない明暗をはらんだ「興奮」を楽しめるかどうか。これが宮西投手の真意ではないだろうか。