今回の台風では日野市近辺の河川敷で生活するホームレス1名が濁流に流され死亡している。Aさんら河川敷で生活するホームレスに対しては、台風上陸の数日前から国土交通省の河川パトロール隊員や川崎市の職員から避難指示が出ていたという。
「ラジオもあるし、危険なことはわかっていたんだけど、なかなか場所を離れられなかった。河川敷はそれぞれ、我々のなかで縄張りがあって、先に住んだ人が優先、新参者は煙たがられるし。集団で暮らしてるところもあるみたいだけど、『物を盗った、盗られた』でトラブルになる。橋下は雨風を過ごせて一番いいのだが、鉄道関連会社の管轄なのですぐにどかされてしまう。
やっとのことで見つけた場所なんですよ。このあたりに住んでいる釣り人なんかも多くて、皆いい人で、体調を気遣ってくれたり、親切に食べ物をくれたりする。嫌なのは公園で遊ぶ子供くらい。小中学生かな。彼らはすぐに物を投げつけてくるからさ。台風と同じくらい嫌ですよ」
支援センターの人はすぐに説教するので嫌に
台東区で10月12日、ホームレス2人が避難所受け入れ拒否に遭っていたことに批判の声が上がったが、Aさんは避難所へ駆け込むことは考えなかったという。
「そんなとこ行ったらゴミ扱いされる。だったらまだホームレス支援センターを頼りますよ。今回も親切に『頼ってくれ』と(センターの職員が)声をかけてくれた。支援センターの人は今までも優しくしてくれて、何度か施設に行ったことがある。でも、自立させようという思いが強いから、すぐに説教が始まって、成功談が自慢話に聞こえてくる。それで嫌になって飛び出してしまった。
こんなときだけ行ったらバツが悪い。でも彼らは受け容れてくれる。どうしてものときは頼るけど、一人でいたくてこういう暮らしをしてるんだから、しばらくの間は空き缶を拾って売って生活するよ」