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これぞ東京の秘境! 1972年に廃村になった奥多摩山中の「峰集落」へ行ってみた

都心から日帰りで行ける廃村巡り #1

2019/10/26

genre : ライフ, 歴史,

「熊出没注意」の看板が……

「東京にも廃村がいくつかあるみたいですね。奥多摩の山の中とか」。酒の席でTに話したのが数週間前のこと。気づけば「行ってみますか」という話になり、自宅の書斎にある奥多摩の登山地図を広げてみた。

 登山は時々するが、地図や装備がこんな形で役立つとは思いもしなかった。なにより、クマよけの鈴を持ってきてよかった。実は山道に入る直前、「熊出没注意」の看板を見つけ、われわれは思わず顔を見合わせていたのだ。

「熊出没注意」の看板。この夏、熊が出たらしい

登山道を離れ、先の見えない林道を行く

 休息もそこそこに再び急坂を登っていくと、踏みしめる地面の質が明らかに変わった。大きな石や岩が目立つようになった。歩みをやや遅くし、なおも行くと、開けた一角に辿りついた。地図によれば、大根山之神(おおねのやまのかみ)と呼ばれる場所で、木製の小さな社(やしろ)が石の上に安置されており、ベンチ代わりの木も二本置かれている。時計を見ると、ここまでで約1時間。ほぼ予定通りだ。

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大根山之神に安置されている社。ここからは登山道を離れ、脇の林道を行く

 川苔山を目指す人はそのまま登山道を上がって行けば良いのだが、われわれが行きたいのは峰集落の跡だ。そのため、ここからは本来の登山道から外れる形で砂利の林道を行く。本当にこの道で合っているのか、若干の不安を感じながら数分歩くと、砂利道が尽き、林の中に土の道が続く。

先の見えない林道を行く……
数分で林道は尽き、土の道が現れる

 横をふと見ると、切り株があり、その上に饅頭、ガラス瓶、湯呑みなどが置かれている。下には3本の酒瓶が切り株の横に身を寄せ合うように立っている。なんだか久々に人の気配を感じた気がする。ここが峰の入り口なのだろう。

切り株に置かれた饅頭やガラス瓶