ヒンドゥー教徒の国・インドで今、アウトカーストである不可触民を中心に、爆発的に仏教徒が増えている。半世紀前にわずか数十万人だった信者は今や1億5000万人となった。その仏教復興の原動力となったのは、インド仏教の頂点に立つ一人の日本人僧、佐々井秀嶺氏だ。彼は半世紀前にインドに渡り、貧しい人々を助けてきた。インドでは絶大な人気を誇る佐々井氏だが、日本ではほとんど知られていない。いったいどんな人物なのか。

子どもたちと交流する佐々井秀嶺氏

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色情因縁に苦しみ自殺未遂3回!?

 佐々井秀嶺(84歳)というインドにいる日本人僧の名前を私が聞いたのは、今から5年前のことだ。たまたま、佐々井氏の支援団体の方から「一時帰国中の佐々井氏を取材しないか?」とお話をいただいた。おそらく現地で住職の傍ら井戸掘りや学校建設などのNPOでもしている優しいお坊さんであろうと想像しながら、ネットや本で佐々井氏について調べ始めた。

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 すると、思いもよらない強烈なキーワードに思わずパソコンの画面を二度見してしまった。何しろ、「性欲が強すぎて童貞喪失11歳」から、「生死をさ迷いヘビの心臓を飲み続け復活」、「色情因縁に苦しみ、自殺未遂3回」、「倒れた先の寺で救われ僧となる」、そして「タイの寺院で三角関係のもつれから女にピストルを突き付けられ」、インドに逃げたという。

 それだけでも漫画のような半生だが、インドに渡ってからどうなったのか。「龍樹菩薩のお告げを聞いて巨大仏教遺跡を発見」したが、「毒を盛られて突き落とされ、暗殺未遂3回」、「8日間の断食・断水決行」、「不法滞在20年で牢屋に。60万人が署名しインド国籍取得」、「30人殺しの殺人犯を改心させ手下にする」、「水爆実験に抗議し首相官邸に乗り込む」と、次から次へと、よく今まで命があったと思える仰天エピソードが続くのだ。

龍樹菩薩のお告げを聞いて、ナグプール近郊の山を掘ってみたら巨大仏教遺跡が出てきたという。

あらゆるインド仏教の組織で頂点に立つ日本人

 しかし、ただの破天荒な怪僧ではなさそうだ。何しろ、半世紀前、数十万人しかいなかったインドの仏教徒が1億5000万人に激増した原動力となったのが、この一人の日本人僧なのである。もちろん佐々井氏の力だけではないが、現在、あらゆるインド仏教の組織で頂点に立って精力的に活動しているのは嘘ではないようだ。

 私は、そんなカリスマのあるすごい日本人がインドにいることを全く知らなかった。しかし、冷静になって考えると、なんだか神がかり的でできすぎた話ではないか。本当は金銀財宝をため込んでいて、多くのインド人は騙されているのかもしれないとさえ考えた。