NHKの連続テレビ小説『べっぴんさん』もあと1カ月で最終回だ。その主人公・坂東すみれを演じる女優の芳根京子は、きょう2月28日が誕生日。ドラマのなかではすでに40代半ばになったヒロインを演じているが、実際は1997年生まれなので、やっと20歳ということになる。
従来の朝ドラでは、人並み外れたバイタリティをもったヒロインが目立ったが、すみれはこのイメージから外れている。子育てについても、それまでのヒロインの多くが強い母ぶりを発揮したのに対し、すみれは常に悩み続け、時間をかけながら解決していた。そんな物語に、まだ19歳の芳根は見事にハマったといえる。すみれの姿はきっと、現実の若い母親たちにも共感を呼んだはずだ。
芳根が女優になりたいと思ったのは、高校の文化祭で映画をつくったことがきっかけだとか。当初は小道具係だったのが、なぜか突然、教師から監督を頼まれ、友達と脚本を書くなどするうち「それがすごく楽しくて、映画やドラマって実際にはどうやって作るんだろうと興味が湧いた」という。現在の所属事務所にスカウトされたのは、ちょうどそんなときだった(『文藝春秋』2017年1月号)。
高校演劇部を舞台とした出演映画『幕が上がる』(2015年)は、芳根にとって高校での実体験と地続きだったともいえる。ちなみにこの作品では、ももいろクローバーZの百田夏菜子と『べっぴんさん』に先立ち共演していた。同じ年に放送された初の主演ドラマ『表参道高校合唱部!』も、廃部寸前の合唱部を建て直すという話で、等身大に近い役だった。『べっぴんさん』のすみれもまた、当初は、同級生たちと女学校時代の延長線上の乗りで仕事を始めた。だが、そのあと、仕事と家庭のあいだで時に板挟みになりながら、経営者としても母親としても成長していく。
芳根は『べっぴんさん』出演にあたり「自分と正反対の役を演じたい」とも語っていた(『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 べっぴんさん Part1』NHK出版)。同作で実年齢よりはるか上の年代まで演じ、ひとつ殻を破った彼女が、20代になってさらにどんなふうに役の幅を広げていくのか、楽しみだ。