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主菜の横で多大な存在感を放つ「ポテサラ」のような存在に

 冒頭「女優はいつから『おばさん』を演じるのだろうか」と書いた。松下由樹に関して言えば、2008年の『Around40 ~注文の多いオンナたち~』あたりからその色が濃くなっていったと感じる。世間で「アラフォーはおばさんじゃない」とキャンペーンが打たれ始めた頃だ。

 90年代、まだテレビドラマに大きな影響力があった時代に、その時々のアイコンとなる女性像を演じた松下は、2000年代に入り母親からサイコパスまで役の幅を広げつつ、2時間ドラマや『大奥』等の時代劇、硬質な警察ドラマ、さらには『ココリコミラクルタイプ』でコントにも挑戦し、それぞれの作品できっちり爪痕を残す。

 このキャリアデザインは、今もドラマでメインキャストの一員として名を連ねる女優たち……天海祐希、鈴木京香、山口智子、鈴木保奈美らとは確実に一線を画すものだ。つまり、同世代の女優たちが生き残りをかけて「カッコ良さ」をまとい「おばさん」を脱ぎ捨てたのに対し、松下由樹は少しずつアップデートを重ね、自然に「おばさん」として存在する道を歩んだのである。デビュー時からのショートカットだけはそのままに。

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左から天海祐希、鈴木京香、山口智子、鈴木保奈美 松下由樹と同世代の女優たちだ ©文藝春秋/Getty/AFLO

 まるでポテトサラダのような存在だと思う。

 昭和の時代から食卓に載り続け、時に加わる食材や微妙な味付けが変わっても、その安定感と美味しさでつねに高い人気を誇るポテサラ。主食になるじゃがいもで作られていながら、副菜として力を発揮する懐の深さ。

「まるでポテトサラダのような」女優・松下由樹 ©文藝春秋

 『G線上のあなたと私』で幸恵が也映子と理人を優しく見守るように、私たちは主菜の横で多大な存在感を放つポテトサラダを見つめながらそっとつぶやくのだ。「やっぱり松下由樹ってうまいよね」と。