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アカデミー賞の割を食った『光をくれた人』はクリネックスの株価を上げるか?

大波乱の作品賞『ムーンライト』の余波がこんなところに

2017/03/10

「あのティッシュ会社の株価が上がる映画」

 ブラッド・ピットは主演作の『マリアンヌ』が公開中ですが、最近、映画に関しては出演より、製作を手掛けることがとても増えました。今回作品賞に輝いた『ムーンライト』もその一本。ブラッド・ピットが製作に関わった映画は、黒人社会にまつわる切実な内容も少なくないです。

『ムーンライト』 3月31日(金)、TOHOシネマズシャンテ他にて全国公開 配給:ファントム・フィルム ©2016 A24 Distribution, LLC 

『ムーンライト』は当初、4月28日からの公開予定でしたが、アカデミー作品賞受賞をうけて、3月31日封切りに繰り上げされました。その分煽りを受けたのが、マイケル・ファスベンダー&アリシア・ヴィキャンデル主演の『光をくれた人』。同じ配給会社の中で、話題の『ムーンライト』を先にもってくる代わりに、『光をくれた人』が5月に押す形となりました。

『光をくれた人』 5月 TOHOシネマズ シャンテ他ロードショー 配給:ファントム・フィルム ©2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC

 でも当然、質の問題ではまったくなくて、配給側が押さえた劇場内でスケジュールをやりくりするためには、『ムーンライト』繰り上げは英断で、「受賞した今やっとかなきゃ!」と思います。内容も黒人社会におけるゲイというセクシャリティを、センシティブに描いた美しい作品です。

『光をくれた人』も割りを食った分、さらに認知されて集客につながるといいですね。本作は主人公トムが、第一次世界大戦で心に傷を負い、世間から遠ざかって、孤島で灯台守の仕事に就くことに始まります。彼は出発前に、波止場でカモメに餌をやる、イザベラという娘に目をとめます。やがて互いに惹かれ合い、手紙のやりとりで愛を育んだ二人は結婚。孤島での二人暮らしも愛によって満たされていますが、イザベラが待望の赤ん坊を流産したことから、物語は思いがけない展開を招きます。

 この映画に対して、ガーディアン紙が出した「クリネックスの株価が上がるほど観客は泣くに違いない!」というコメントの、突飛ななんとも言いがたい勢い。あまりに面白かったので、本作の配給や宣伝の方に用があってメールをするとき、『光をくれた人』とは書かずに「あのティッシュ会社の株価が上がる映画」と書いてます。

『光をくれた人』 ©2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC

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