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 なぜこれらの案件が大手メディアでは報じられなかったのか。それにはいくつかの“仕掛け”があるのだが、最大の原因は警察の不祥事は記者クラブでは「広報」されないことだろう。

 元来、警察が自ら発表する内容は、事件解決につながる情報や、お手柄話が多い。なので報じてもらうためにあれこれ努力する。例えば下着泥棒逮捕ならカラフルな下着をずらりと並べて映像を撮らせるというお馴染みのスタイルだ。ご丁寧にもその背景には「◯◯署窃盗事件押収品」などと墨書きした文字まで置かれていたりする。

 だが、これが警察の組織防衛に関わるとなれば話は全く別だ。職員を処分せざるを得ない案件でも、その「原因」は、なんとかお蔵入りさせたいということなのか。

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 記事を執筆した小笠原淳記者は、懲戒処分の経緯を記録した書類の存在を知り、開示請求してこれらの事実を闇から引きずり出した。隠された公文書の発見はまさに調査報道の基本である。

 北方ジャーナルではこの種の記事を一昨年より続けており、すでに十二回の連載になっている。同号では〈陸自実弾誤射 防衛省開示文書を読む〉という記事なども小笠原記者によって執筆されており興味深い。

 かつて道警は「裏金作り」の実態を地元紙・北海道新聞の報道により暴かれたことがある。だが、報じた記者たちはその後になって当局から様々な形で圧力を受け、今も道警とメディアとの間に深い溝があると聞く。そんな中、未だに自らの不祥事を隠蔽、あるいは矮小化しているようでは市民の信頼を得ることなど到底難しいだろう。

 警察と記者はどんな距離を取るべきなのか……。一地方雑誌の調査報道記事は、そんなことまでも考えさせてくれる秀逸なものなのである。