文春オンライン

これぞ東京の秘境! 1972年に廃村になった奥多摩山中の「峰集落」へ行ってみた――2019 BEST5

都心から日帰りで行ける廃村巡り #1

2020/01/07

genre : ライフ, 歴史,

note

杉林を超えて遂に「峰」に到着!

 昼なお暗い杉林を抜けていくと、道がT字路のように分かれており、左側に物置のような小屋が見えた。近づく。屋根に木の枝が敷かれたわずか2畳ほどのその建物の正面上には「日天神社」という額がかかり、控え目なものながら、しめ縄もかけられている。事前に調べていた情報通りだ。思っていたよりも周囲は鬱蒼としているが、ここが峰集落跡で間違いない。

杉林の先にひっそりと佇む「日天神社」。ここが峰集落の跡だ

 中を覗くと薄暗く、神棚のようなものが見えた。建物の背後には、大人が抱え切れないほどの大木が3本生えている。1本はイチョウの木、あとの2本は杉だ。だが、その杉はよく見ると1本で、根元に近い場所から枝分かれしていた。

のそりと姿を現わした“最後の住人”

 その社の横には石造りの貯水槽のようなものがあって、緑色に濁った水を満々とたたえている。苔むした縁石に近づいていくと、下からのそりと苔の上に登ったものがあった。「うわっ!」。突然のことに、Tとともにのけぞった。

ADVERTISEMENT

 よく見ると、体長20センチほどもある巨大なガマガエルだ。前に廻って顔を覗くと、ふてぶてしい表情をしている。顔は紅で化粧し、背中は茶色で腹の部分が白色で、黒い線が縦に走る。なかなかお洒落ななりをしている。「ここは廃村なんかじゃない。俺が最後の住人だ」。そんな科白を吐いているようだ。

石造りの貯水槽か。よく見ると手前にガマガエルが写っていた
縁石に上がったガマガエル

 社の向かいの土地は一段低くなっており、元は家の屋根だったに違いないトタンが土の下から覗いている。屋根や壁を構成していたであろう木材が盛り上がっている。そこには何軒かの家が建っていたものと思われた。見た目は地面に思えるが、大きな穴が開いていないとも限らない。

社の向かいには崩れた家のトタン屋根が点在していた

確かに残っていた生活の痕跡

 周辺を歩いてみると、かつて人間がそこで暮らしていた痕跡が目に入ってきた。鍋、釜、薬缶といった炊事道具から、中華椀、急須、一升瓶、ゴム長、プラスティック製のおもちゃ等々。ガスボンベやテレビの一部らしきものもある。標高600メートルの山中にあり、1972年に廃村になったこの集落にも、電気は引かれていたのだ。

プラスティックのおもちゃだろうか
「峰」ではゴム長靴もよく見かけた

 さらには、自転車の車輪のようなものがついた、鉄錆びた謎の物体を発見。前衛アートのようだ。後で調べてみると、足踏み式の脱穀機らしい。この地で稲や麦を栽培していたということだろうか。

鉄錆びた物体。どうやら足踏み式の脱穀機らしい

 そのとき、10メートルほど離れていたTが声を挙げた。

「ありましたよ!」