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「夢よ、再び」の期待

 孫社長のベンチャー投資は、創業期の米ヤフー、中国のアリババ・グループを見出し、何兆円ものキャピタル・ゲインを得た実績がある。SBGが保有するアリババ株の価値は現在、13兆円。「千里眼」の孫社長が率いるSVFには「夢よ、再び」の期待がある。

 だが、出だしで躓いたウィーワーク問題の根は深い。

11月16日の決算説明会での孫正義社長 ©︎大西康之

 テルアビブで生まれのアダム・ニューマンが2010年に立ち上げたウィーワークは、ニューヨークをはじめとする全米、ヨーロッパや日本で、ベンチャーやフリーランスに仕事のスペースを貸し出す「シェアオフィス」で急成長した。2019年の秋に株式上場を予定したが、ニューマン氏の不適切な取引や上場目論見書の不備などが発覚し、今年10月、新規株式公開(IPO)を見送った。これで500億ドル(約5兆円)と推定されていた評価額が80億ドル(約8000億円)に暴落した。

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常軌を逸したウィーワークへの入れ込みぶり

 ベンチャー・ファンドが投資に失敗するのは、よくあることである。ベンチャー投資は俗に「千三つ」と言われ、1000件投資して997件失敗でも、3社が上場にこぎつければ、元が取れる。この場合、失敗した出資は諦めて「損切り」するのが常道である。

 ところが今回は、投資ファンドであるSVFの案件だったウィーワークを救済するため、親会社のSBGが1兆円近くの金融パッケージを提供している。SBGはスプリントの再建で腕を振るった副社長のマルセロ・クラウレをウィーワークに送り込み、再建に全面的にコミットする姿勢を見せている。ベンチャー・ファンドが失敗した投資先の再建にいちいち関わっていたので、金も人も足りるはずがない。SBGのウィーワークに対する入れ込みぶりは、明らかに異常である。

 実はウィーワークはただのベンチャー企業ではない。世界的な金融緩和で不安定な状態にある世界の金融を支えるキー・ストーンなのだ。