瀧内公美(34)の評価を決定的なものにした『火口のふたり』では性愛描写も話題を呼び、多くのメディアで“注目”を集めることになった。その時、彼女が人知れず抱いていた思いとショックを受けた出来事、そしてこれからの目標を尋ねた。(全3回の3回目/第1回、第2回を読む)
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濡れ場の悔しさは濡れ場で晴らすしかない
――2019年の映画『火口のふたり』は、キネマ旬報主演女優賞やヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞するなど、瀧内さんの評価を高める作品になりました。ご自身にとっては、どんな作品でしたか?
瀧内 柄本佑さんとの二人芝居でしたけど、そういう作品って日本の映画ではあまりありませんよね。お話をいただいたときに、パッと思い浮かべたのは『愛のコリーダ』です。面白そう、挑戦してみたいなと、直観的に思いました。
――数年ぶりに再会した男女が互いの体を求めあう『火口のふたり』は、その性愛描写も話題を呼びました。瀧内さんは他の作品でも裸のシーンや濡れ場を演じてきましたが、初めのころは怖さや抵抗感を感じましたか?
瀧内 私はもともと抵抗を感じないタイプだったんです。ヨーロッパ映画を観るのが好きだったので、むしろフランスの女優は潔くていいなって。でも、こうして取材していただいて申し訳ないですけど、みなさんがお書きになる記事で傷つくんですよね。「大胆」とか「体当たり」とか……体当たりって相撲取りじゃないのに(笑)。
定型文にはめ込まれて、驚くような書き方をされると、そんなつもりではなかったのになと思います。自分自身はともかく、親が傷つく姿を見るのがなによりショックですよね。親には帰郷したときしか会えないので、普段どんな言われようをしているのかわかりません。たぶん酷いことを言われたときもあっただろうし、そんな思いをさせているのかと思うと、そのことにショックを受けます。親を守りきれなかった、申し訳ないなって。
ただ自分としては、『彼女の人生は間違いじゃない』(2017年)でうまくできなかったという思いが強かったんです。本当にいい作品ですけど、うまくやりきれなかったせいで、濡れ場のことばかり取り上げられてしまった。だから濡れ場の悔しさは濡れ場で晴らすしかないと思ったんですね。ちょうどそのタイミングで『火口のふたり』のお話があったので、思いきりやってやろうって。あそこまでやり尽くせば、無念を晴らせるにちがいないと思いました。