楽天球団から届いた一通のメール
4月2日のオリックス戦、4点ビハインドで迎えた8回に茂木栄五郎選手のツーラン、銀次選手のタイムリーで3点を返し、9回には守護神の平野佳寿投手からペゲーロ選手が逆転ツーランホームランで勝利! 見事に開幕カード3連勝を決めた。
試合の後、オリックスファンの野球仲間に「かみじょう、顔がニヤついてるでっ」。きっと腹立つ顔してたんやと思います。京セラドームでこんな顔ぶら下げてDOMIさんの仲間に出くわしたらそれこそ一巻の終わりですわっ笑。足早に球場を後にし一人で立呑屋へ。祝杯のビールを注文するやいなや、僕に届いたのはビールではなく楽天球団さんからのメールだった。
楽天「かみじょうさん、今月の12日空いてます?」
かみ「多分だいじょーぶでーすっ」
楽天「じゃ、仙台きてください!」
かみ「はーい」
楽天「始球式お願いしまーす」
かみ「はーい??」
……
えっ、ええぇぇぇー!!!!!
し、し、し、きゅーしきやとー!!!
なんでやっ。なんでやっ。なんでやっ。
楽天「うちの立花陽三がかみじょうさんの文春野球コラム(ゆで卵片手に始球式して怒られそうになった話)を読みまして、やってもらったらと」
かみ「た、た、た、たちばな球団社長がぁ!!!!」
球団社長が僕の文春野球コラムを読んでくださってるなんて……。ちょっと待て。「多分だいじょーぶでーすっ」て、先輩からの興味のないお誘いを一旦飲み込んで、やっぱり断る時の最初の返事やないか! すぐにマネージャーに確認の電話。
かみ「ちょ、ちょ、ちょっと12日に楽天さんが、、」
マネ「さっき連絡ありました」
かみ「で、ス、ス、スケジュールは?」
マネ「朝に大阪で仕事が入ってまして」
かみ「えっー!! 無理? 無理なの?」
マネ「どうでしょう」
かみ「調整でけへんの? 調整、調整や! 佐久長聖やぁ!」
マネ「一度きいてみますね」
電話を切る頃には、いつの間にやら届いていたビールの泡もなくなっていた。
次の日、マネージャーから調整がつき、始球式に行けるとの連絡が入った。とうとう夢の本拠地公式戦のマウンドに立てると思うと喜びと不安で胸がいっぱいになった。
「ゆで卵やないかーい」再び
そして、あっという間にその日はやってきた。昼までに大阪で仕事を終え、13:30の飛行機に飛び乗り仙台へ。始球式40分前に球場に到着、室内練習場でスタッフさんにキャッチボールをしていただき、15分前にはベンチ裏に移動しヘッドセットを装着した。
では、そろそろマウンドへ。球審の手が僕の背中を軽く押してくれ歩き出すことができたが、緊張のあまり上半身がまったく動かない変な歩き方になっていることは自分でもわかった。そんな僕をKoboパーク宮城の大歓声が温かく迎えてくれた。
プレイボールの合図でグラブの中のいつものヤツを握りしめ叫んだ。
「これゆで卵やないかーい!」
思ってた以上にお客さんの反応が良かった。
もう一度
「これゆで卵やないかーい」
まだウケてる。
欲がでた。自分の中の台本にはないセリフが、
「礒部コーチ、塩もってきてーなぁ」
あかん、何をいうてるねん。はよ投げなぁぁぁ。
……
気づけば、ベンチ裏にいた。礒部公一コーチのくだりから覚えてる事といえば、ボールを渡してくれた嶋基宏捕手のマニキュアが黄色だった事くらい。大丈夫だったかなぁと不安になる僕に、
「かみじょうさん! 明石のオープン戦よりウケてましたね!」
声をかけてくれたのは、明石でワイヤレスマイクを渡してくれたスタッフさんだった。どちらの始球式も見守ってくれていたスタッフさんの一言に救われ、ようやく僕の大役は終わったのだとホッと胸を撫で下ろした。
あの始球式から4日経ち、お仕事でまたKoboパーク宮城を訪れた僕は試合前の練習を見学させてもらっていた。
「ほんばにぼー、塩もっていこかぁー」
声の主は礒部コーチだった。
「おはようございます! こないだは勝手に名前出してすみませんでした」
「いつでも、名前使ってやー。ただ明石のオープン戦もあの日も負けたし芸人さんが投げたら負けるかな? 勘弁してやぁー。」
気づかれていた……。実は現在10勝2敗のイーグルス、負けたのはサンドウィッチマンさんと僕が投げた日だけなのだ。バツの悪そうな顔をしている僕に
「次また投げるときは、ホンマにマウンドに塩持っていくわ! またいつでも投げに来て下さい!」
「ありがとうございますっ!」
頭を下げながら思った。次また機会があるならば本当に塩は持っていこう。
ゆで卵にではなく、お払いの意味で。
◆ ◆ ◆
※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。
対戦中:VS 埼玉西武ライオンズ(中川充四郎)
※対戦とは同時刻に記事をアップして24時間でのHIT数を競うものです。