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専門家が見るとAさん夫妻のプランにはこんな落とし穴が…

 こうした買い方に対する私から見た懸念は以下のとおりだ。

(1)マンションが竣工する2年後、東京湾岸の中古マンション相場はかなり下落することが予測される(途中で売却したときに売却損が出る可能性が大きい)

(2)夫婦共働きで1000万円。どちらかが、リストラあるいは健康を害した場合の担保が何もない。もちろん夫婦仲が悪くなったときのことは(余計なお世話だが)一切考慮していない

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(3)東京都内の人口は逓増していても、年齢構成については今後、急激に高齢化して、家に対する実需は確実に減少する

(4)今後都内の団塊世代以上が保有する戸建て、マンションが大量に売却されたり、賃貸に供されたりすることが予想される

(5)この世代は年金受給の受け取り時期の大幅な遅延と、支給額の減少が避けられない(退職金の一部でローンの返済を考えるのは非常にリスクが大きい)

(6)35年後のマンションは老朽化した物件になる。将来、Aさん夫妻が検討している湾岸部のタワーマンションがビンテージマンションになる可能性は低い

金利を含めると9800万円の借金なのに…

 日々の買い物には一切の無駄なく、ネットを駆使しながら常に合理的な判断を下していく彼らが、

「いったい何のために家を持とうとしているのか」

という問いに対して、「今」という視点だけで、しかも35年も先までのことを「まあ大丈夫だろう」という不確かな確信で、これからの人生で稼ぐおカネの大半(35年間で金利分を含めると9800万円!)を投じようとしているのである。

「金利」と「税金」の優遇は家を買わせるための「誘い水」であっても、その誘い水に乗っかって、人生のすべてをローン返済のために費やすことについては、「これから世代」の人たちはもっと慎重になったほうがよいように思える。

国もマンション業者も銀行もあなたの人生を保証してくれない

 誘い水をこしらえた国も、そしてさわやかな笑顔でセールスしたモデルルームの女性も、そして淡々と手続きをする銀行員も、これから膨大な時間をかけて返済をしていくあなたの人生に対して、さしたる興味があるわけでも、ましてや保証しているわけでもないのだ。

 さて、同じように「これから世代」に属する別のBさん夫妻からの相談は、これからの時代を見据えた「しなやか」な住宅購入戦略だった。次回はその内容をご紹介しよう。

※「『これから世代』家の選び方(下)──Bさん夫妻の場合」に続く