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なぜトヨタは富士にイチから「自動運転実験都市」を作らなければならないのか

なぜトヨタは富士にイチから「自動運転実験都市」を作らなければならないのか

豊田章男社長がラスベガスで語った真意

2020/01/08

source : 週刊文春デジタル

genre : ニュース, テクノロジー, 経済, 社会

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 デザインを担当するのは、建築家ビャルケ・インゲルスが率いるBjarke Ingels Group(BIG)。イーロン・マスクとともに、火星移住計画用の都市設計やチューブ状の高速移動システム「ハイパーループ」を検討したことでも知られる。富士の裾野に未来的な都市を作るなら、うってつけのパートナーといえる。

豊田章男社長(左)と、デザインを担当した建築家のビャルケ・インゲルス氏(右) (筆者撮影)

トヨタがスマートシティを作る理由とは

 トヨタは2021年からWoven Cityの建設に着工。当初はトヨタ社員や研究者を中心に、2000名が暮らす街の開発を目指す。

 こうした都市づくりは俗に「スマートシティ」と呼ばれる。取り組みとしてはそこまで珍しいものではない。地方自治体などが取り組む例が多いのだが、日本でもパナソニックが神奈川県藤沢市・横浜市綱島、大阪府吹田市などと共同で進めている。

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 ただ、それらとトヨタのWoven Cityでは、性質が異なる部分がある。トヨタが自社の敷地内に、まず自社関係者を集めて作る「実験都市」でもある、ということだ。パートナーは「オープンに募る」(豊田社長)とはいうものの、トヨタの敷地でトヨタの技術とアイデアを使って作っていくため、スマートシティよりもトヨタ1社の考えが強く押し出されている。

トヨタが公開したWoven Cityを紹介する動画

 また、既存の都市をスマート化するのではなく、1から作るため、より大胆に「自動運転車があることを前提とした街」を作り上げることができる。非常に夢のある壮大な計画だ。

 しかし、夢がある壮大な計画であるがゆえに、具体性に欠ける部分がある。2021年着工とされているが、いつまでにどういう計画で作っていくのか、という情報は公開されていない。かかる予算も、技術的な課題に対する答えも示されていない。なにより、この街を作ったからといって、トヨタが直接的に儲かる仕組みにはなっていない。