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2020/01/08

source : 週刊文春デジタル

genre : ニュース, テクノロジー, 経済, 社会

自動車の未来を「自ら作ってみせる」

 それでは、なぜトヨタは、このような街を作るのだろうか?

 答えは、豊田社長の、次の言葉にある。

「我々は誰も、自動車の未来を占う水晶玉はもっていない」

 自動運転が自動車の未来であることは、関係者の多くが認めることだ。だが、「実際に自動運転車が多数、あたりまえのように走っている街」がどのようになるのか、ちゃんと予測できている人はいない。やってみなければわからない部分が多すぎる。

 トヨタは、2018年のCESで「e-Palette」という構想を発表した。自動運転車を作り、それをカーシェアリングや物流などに「サービス」として提供することで、単に自動車を売るのではない、「モビリティ(移動)をサービスとして提供する企業」への脱皮を宣言した。その後、ソフトバンクと組んで「モネ・テクノロジーズ」を設立、今年2020年には、e-Paletteの実車を街中で走らせる計画を持っている。

モネ・テクノロジーズで開発中の「e-Palette」。Woven City構想でも中核を担う(筆者撮影)

 しかし、現状では、e-Paletteを実験として走らせるのがせいぜい。自動運転車を理想的に運行するには、街中にセンサーを張り巡らせて、人と車の情報を常に収集・活用する仕組みの存在が望ましい。自動車を売るのではなくサービスを売る、という新しいビジネスモデルを実現するには、まだまだハードルが多い。

 こんな状況では、トヨタのビジョンを理解してもらうのも難しいし、ビジネスを具体化するための研究開発や試験も難しい。

 だからこそトヨタは、「サービスとしての自動運転車が存在しうる街」を作ってしまうことで、その姿や可能性を、誰の目にもはっきりと見せようとしているのだ。

自動運転車である「e-Palette」が時には「屋台」になり、街を彩る(筆者撮影)

 重要なのは、ここまで大胆なビジョンを、トヨタのような大企業がトップダウンで打ち出せているということだ。イーロン・マスクが同じことを言い出しても驚かないが、豊田章男社長が打ち出している、というのが面白い。具体性や実現性には疑問点が多いが、トヨタには、そうした懸念を「実証」で払拭していって欲しい。

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