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ベイスターズを黒字化した社長が語る「大切にしたのは“デザイン”と“センス”」

ベイスターズを黒字化した社長が語る「大切にしたのは“デザイン”と“センス”」

史上最年少球団社長の「常識を超える」経営術(2)

note

センスやデザイン性を切り捨てるな

――売上を伸ばしながら、コストカットする一方で、投資という部分では、思い切って時間とお金をつぎ込んでいるという印象もあります。

池田 例えば、球団のオリジナルビールの開発には2年間費やしました。絶対においしいと感じてもらえる“本物”のビールをつくるために、クラフトビールの本場であるアメリカのポートランドやドイツに飛んで、ビールの製法や味はもちろん、ラベルやボトルのデザインまで研究し尽くしました。ただ、周囲からすれば社長は何で海外でビールを飲んでいるんだろうと思っていたかもしれません。しかし、結果が出ればみんなが納得して、次のステップに進めるわけです。

球団のオリジナルビール。味わい、質はもちろん優れたデザインで夕焼けに映えて美しい。乾杯!

――著書の中でも「デザイン」「センス」といった言葉が頻繁に出てきます。赤字を抱え、数字を追求する経営者の口からはあまり出てこないキーワードというか……。

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池田 一番変えるのが難しい部分だからです。会社の売上を上げるという目的のもとに売上を伸ばしたとして、その後に格好いい物をつくろう、面白いことをやろうと言われても無理なんです。センスやデザインなど、数字を追求する上では一見“無駄”だとされがちなものを許容していかないと、後からは絶対につけられません。勉強しなさいと言われ続けた人間が、いきなり遊べと言われても遊び方がわからないのと同じです。

――5年間のベイスターズでの経営をあらためて振り返ると、何を感じますか?

池田 最近になってベイスターズで自分が行なってきたことは“常識を超えていたんだな”と実感します。周囲からも、思いつきもしないようなことを、よく次々にやったよねと言われることが多いのですが、当時の私からすれば、経営者として当たり前のことをやっているという感覚でした。それに、私が5年間で積み上げてきた経営メソッドは、再現性があると感じます。

“素人”として球界に足を踏み入れ、失敗を重ね、そのたびに学びを得て、改善と挑戦を繰り返す中で確立してきたビジネスモデルは、球界を超えたスポーツビジネス、あるいは一般企業の経営にも生かせると思います。

池田 純(いけだ じゅん)
1976年1月23日、神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学卒業後、住友商事、博報堂を経て、2007年にDeNAに入社。執行役員マーケティングコミュニケーション室長を務める。2010年にNTTドコモとDeNAのジョイントベンチャー、エブリスタの初代社長として事業を立ち上げ、初年度から黒字化。2011年に横浜DeNAベイスターズの社長に史上最年少の35歳で就任。5年間で数々の改革を行ない、売上は倍増、観客動員数は球団史上最多、24億円の赤字から5億円超の黒字化に成功。2016年10月16日、契約満了に伴い、横浜DeNAベイスターズ社長を退任。現在はJリーグ特任理事、日本ラグビーフットボール協会特任理事、明治大学学長特任補佐、複数の企業の社外取締役やアドバイザーを務める一方、Number Sports Business College(NSBC)を開講するなど、いくつもの肩書を持つ実業家として活躍している。

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