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パレード後、赤の広場に片足だけの靴の落とし物があった

 そんなここ数年において最も盛り上がりに欠けた戦勝記念パレードを、国内メディアはどう伝えたか。

 イズベスチヤやコムソモリスカヤ・プラウダなど政権寄りの新聞は各紙ともプーチン大統領の式典での演説の内容や、天候不順で航空部隊の参加が中止となったこと、セルゲイ・ショイグ国防相の軍服が戦争時のデザインを踏襲し開襟から詰襟に変わったこと、赤の広場での行進の後、片足だけの靴の落とし物があったこと、などなど無難なネタからどうでもいい小ネタで紙面を埋めている。

詰襟の軍服を着るショイグ国防相 ©getty

 コメルサントは「パレードにとって悪い天気などない」との見出し。これは有名なロシア映画の劇中歌にかけたもので、歌詞は「自然にとって悪い天気などない/雨でも雪でもどんな天気であれありがたい/感謝して受け入れなければならない」というもの。悪天候ではあったがパレードはパレードだ、今年も盛大に開催できたではないかと、すべてを受け入れるロシアの度量の大きさや忍耐強さを表しているわけだ(とはいえ半分は皮肉だろう)。

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 ロシースカヤ・ガゼータは「Белые на Красной(赤に白)」の見出しで、赤の広場で初お目見えとなった北極圏仕様の防空ミサイルシステムの写真を大々的に掲載。アーミーグリーンではなく白地の迷彩柄のボディに白くまのマークが描かれ、美しく印象的だとの説明にとどめているものの、背景にあるのは近年著しい北極圏におけるロシア軍の軍備増強であり、今後北極海での資源開発をめぐりアメリカ、カナダ、ノルウェーなどと緊張が高まっていくことを意味している。

戦勝記念日の模様を伝えるロシアの各紙新聞 ©栗田智

「天候操作」を請け負ったATTEX社の告白 

 タブロイドニュースサイトのLifeニュースは、今年の天候操作を請け負ったのはロシアのATTEX社で、およそ3億ルーブル(約6億円)もの巨額費用が投じられたと報じた。金額は5月と6月の祝日3日間の合計で、1日あたりに換算すると今回のパレードのために2億円が“雲散霧消”したとの内容。なかなか洒落の利いた良記事であるが、ATTEX社の担当者も消されはしないか心配になる。

 ロシアの誇る天候操作技術が自然の脅威の前に敗れた今年の戦勝記念日。ここへきてプーチンの神通力が弱まってきているのか、はたまた来年に迫った大統領選に向けて力を温存しているのか。プーチンのみぞ知るである。