夢の本屋と現実の棚
入り口脇の棚に「まだまだ知らない夢の本屋ガイド」というフリーペーパーを置いていた。書店員ユニットによる、実在しない、空想上の本屋レポートだ。あたかもその冊子の中で紹介された架空の店舗であるかのように、棚を作っている。『デフ・ヴォイス』にも登場するコーダについての本、テーマパークのアトラクションを巡るメディア論、遊びをテーマにした哲学書、新進気鋭の詩人の詩集や昭和初期の文豪の随筆もある。ジャンルもテーマもバラバラで、実用性とはかけ離れたもののようにも見えるが、有地さんは、「射程が広いので、普通に言われる実用書よりも実用にかなう」という。
あゆみBOOKS小石川店のツイッターで、ときどき現実には存在しない架空の本屋、架空の陳列についての投稿がある。いわゆる実用的な、例えばベストセラー確実な小説の新刊情報や店周辺のグルメスポット情報よりも、荒唐無稽な空想上の棚のイメージの方が面白い。ツイートがきっかけで著者や編集者、読者との交流もある。そのまま現実の棚に反映させられるわけではないが、フェアやPOPの中にそのイメージが活きていたりするそうだ。
【本の話WEB読者にオススメ】
そんな有地和毅さんのオススメ本は、大林寛さんの原作・監修、コルシカさんのまんが『学習まんが アフォーダンス』(エクリ)。
環境が人間に与える意味とか価値とかいう意味の「アフォーダンス」を、やさしくまんがで説明した本。一般の書籍流通に乗らない本なので、紙の本としては、あゆみBOOKS小石川店など、ごく限られた本屋さんでしか手に入らない。有地さんが惚れこんで仕入れているこの本も、世界との接点を読み解くためのツールと考えれば、射程の広いとても実用にかなう本なのだろう。
あゆみBOOKSが好きだ。会社帰りについ寄ってしまう。楽しい。これからも遠慮なく、本当の意味で役に立つ、楽しい売り場を作ってほしい。
あゆみBOOKS 小石川店
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