また同じ新潟県南西部の角田浜という地に、「カーブドッチ」という、ワイナリーがある。新潟ワインというとピンとこない人が多いかもしれないが、1992年から砂地を生かした敷地にぶどう畑を造成、ここに現在では5つのワイナリーが集結し、産出するワインの質を互いに競いあっている。
こうした試みはただ単に、「衣食住」のみを整え、町から人を出ていかせないための施策に頭を悩ますのではなく、町をどのように演出し、国内外の人を呼び寄せるかという立派な事業戦略なのだ。
京都は観光だけで食っている町ではないからこそ発展した
京都が昔から多くの人々を魅了して、今でも観光都市としておおいに発展しているのは、食事のおいしさだけではないし、ましてやゆるキャラがあるせいでもない。京都には多くの人たちが出入りし、様々な産業を興し、栄枯盛衰を繰り返していく中で、独自の文化が生まれ、育まれていった結果としての現在の姿があるのだ。
京都は現代においてすら、京都をオリジンとする京セラ、オムロン、日本電産などの産業が勃興している。何も観光だけで食っている町ではないのだ。
これからの地方創生は、豊かな自然と食を強調した「Iターン」だ、「Jターン」だといった移住を含めた「人集め」からやるのではなく、腰を据えて、町の産業を企画立案し、町から一歩出て東京や大阪、あるいは外国の知恵も利用して、良いものを積極的に取り入れていく中で、独自の産業・文化を形成していくことが求められている。「衣食住」だけの観点からでは、町の発展はありえないのだ。
地方に残っている若者たちの冷めた視線
地方を旅していて気になることがある。地方に今、残っている人の多くが、「もうこのままでいい、ほっといてくれ」という感情で地方創生を眺めている点だ。特に、若い人の中でも「自分たちはさして困っていないし、東京からのアイデアの押し売りはやめてほしい」といった冷めた見方が支配的になっていることに愕然とする。
地方に残った人たちほど、東京などの大都市との間を頻繁に行き来し、そこで得た人脈や事業上のヒントを自らの町に持ち込んで、町の発展に役立ててほしい。
新幹線と高速道路は、地方から都会に人を吸い上げるストロー効果などと言われ、地方衰退の元凶とまで言われているが、なんてことのない「下り」電車にも、バッグに入れて持って帰れる都会の知恵はいっぱいあるはずだ。
みんなで同じような店に集まり、「このままでいいや」と言っている人たちには決して「未来」は開かれていないのだ。