1ページ目から読む
2/2ページ目

過去と決別した楽天、過去を引きずる巨人

 今振り返れば、あの13年日本シリーズは巨人にとってターニングポイントだったように思う。ペナントで32本塁打を放った大黒柱の4番キャッチャー阿部はシリーズ通算22打数2安打、打率.091の大スランプ。翌年も打撃不振と故障に苦しみ、「阿部のチーム」はあっけなく終わりを告げた。2017年、すでに背番号10はベテラン一塁手だし、強力投手陣を形成した内海、杉内、澤村、山口鉄、西村はもはや全員1軍にはいない。

 同時に彼らに取って代わるような若手も4年目サウスポー田口麗斗以外に見当たらないリアル。大卒ドラ1投手の桜井俊貴が2年目に敗戦処理の中継ぎでマウンドに上がり、2位のその年チーム最上位指名野手の重信慎之介が2年目に早くも代走定着っていうのは「いったいどんなドラフト戦略だよ」と疑問を抱かずにはいられない。スーツを買いに行ったのに、ネクタイとワイシャツだけ買って帰るくらい意味不明だ。ちゃんと高級スーツ買ってくれよ。って買ったよ、どこだよ? いやゴメン、山口俊も陽岱鋼もなんかサイズ合わなくて仕立て直し中でさ……。今季ここまでキャプテン坂本勇人とスーパーエース菅野智之の投打の柱、セットアッパーを務めるマシソンの大車輪の活躍で、フラフラになりながらなんとかAクラスに踏みとどまっているのが現状だ。

 そんな苦しむ由伸巨人を横目に30勝12敗でリーグ首位を快走する楽天は、日本一の翌年入団の松井裕樹が2年連続30セーブ以上と球界屈指のクローザーへと成長し、野手では生え抜き野手として球団初の二桁本塁打を放った茂木栄五郎という23歳のニュースターも出現。さらに元西武のエース岸孝之をFA獲得。最近は則本の野茂英雄(近鉄)以来26年ぶり2人目の6試合連続二桁奪三振とド迫力の攻撃的2番打者ペゲーロが話題に。梨田昌孝監督のもと、栄光の「2013年の楽天イーグルス」とはまったく別の魅力的なチームへと生まれ変わりつつある。

ADVERTISEMENT

 誤解を恐れず書けば、今の対照的な球団状況は、過去と決別して新しいチーム作りに邁進した楽天と、過去を引きずり続けてチーム作りが後手に回り続けた巨人の差とも言える。

 2013年の日本シリーズから早や4年。あの時の巨人は五冠達成の絶対王者として仙台に乗り込んだ。けれど今度は自分たちが「挑戦者」だ。

 頼む、由伸監督。冷めている挑戦者の戦いは見たくない。過去なんて捨てちまえ。

 See you baseball freak……

※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/2702でHITボタンを押してください。

対戦中:VS 東北楽天ゴールデンイーグルス(かみじょうたけし)

※対戦とは同時刻に記事をアップして24時間でのHIT数を競うものです。