東北で感じた楽天ファンの優しさ

 さぁいよいよ交流戦に突入です! 楽天イーグルスは30勝12敗の貯金18! あれだけ強いと思っていた昨年のホークスとほぼ同じ状態です。「セ・リーグ相手に全敗しても5割キープですばい」。ホークスファンに言われた言葉を一年ぶりにかみしめております。しかしながらまだ後100試合以上あります。我が楽天イーグルスはおごらず愚直に目の前の敵に向かっていくだけです!

 さてシーズンが始まり月一回ペースで仙台に行き、野球を観て、ファンの方々とお話しさせてもらったりするのですが、いつも感じる事は、とにかく東北のファンの方々は優しい。どこまでも優しいのです。

 こないだなんかも僕のTwitterが乗っ取られ、その事をTwitterで呟くと、すぐに解除の方法を呟いてくれたり、球場に着くなり駆けよってきて、

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「なおす方法を紙に書いてきました」

「僕の知り合いでなおせる人いるんです。紹介します」

挙げ句は「お大事にしてくださいね」

 わしゃ病気か!

 とにかく東北のファンは優しいのだ。そして、それはファンだけではない。例えばウィーラー選手。今でこそ徐々に打率をあげ2割5分までたどり着いたが、5月の中旬まで打率は1割台をさまよっていた。にもかかわらず、ベンチでは絶好調のペゲーロ選手のホームラン、タイムリーに本人以上に大はしゃぎしていたのだ。ペゲーロ選手は仲間とはいえシビアな外国人枠もあり、ライバルである。活躍に明らかな差が出ると自分のクビも飛びかねないが、きっとそんな事など考えてもいない。

 勝負の世界、優しいだけでは勝てないのは百も承知だ。しかし、これはどういう類いのものなのだろう。

 僕は一つの答えにたどり着いた。こう考えてはどうだろう。東北のファン、楽天イーグルスの選手の優しさとは、誰かのために何かしてあげたいという気持ちなのではないか。そしてこういった時に信じられない力を発揮するのではないか。

巨人との日本シリーズで見せた「Dパワー」

 そう考えると2013年の巨人との日本シリーズもそうなのかもしれない。第7戦の9回表、「則本に代わりまして背番号18田中将大」のアナウンス。球場全体にこだまする「あとひとつ」の大合唱。思い出すだけで鼻の奥がツーンとします。

 あれだけブルペンが映る日本シリーズが過去にあっただろうか。最後は前日に160球投げた田中将大投手が締めて日本一になったわけだが、注目してほしいのは2勝2敗で迎えた第5戦からである。このシリーズ初の延長戦となった試合、10回表、先頭の則本がフォアボールで出て、岡島が送ってワンアウト二塁で藤田選手に打席がまわった。3戦目、4戦目ともにいいところでタイムリーを放っていた背番号6にファンの熱い視線は注がれる。しかし次の瞬間、巨人西村投手の剛球が左足ふくらはぎを襲った。

左ふくらはぎに死球を受けた藤田一也 ©文藝春秋

 悶絶する藤田選手。ベンチ裏で応急処置後に痛みに耐え一塁走者として戻った。銀次のタイムリーで必死にサードベースまでたどり着くも限界だった。星野仙一監督からのストップがかかった。

 ベンチに下がる藤田選手は泣いていた。この大事な時に途中交代しなくてはならない事への悔しさなのだろうか。ベンチで皆が出迎え、マギー選手がネクストバッターズサークルからわざわざ藤田選手に駆け寄り背中をポンとしたのが忘れられない。そしてその後、ショートへのタイムリー内野安打を放ったアンドリュー・ジョーンズ選手がベンチで涙する藤田選手に声をかけたという。

「俺はお前のために打った。俺は涙を流した人達(東北と藤田選手)を笑顔にするためにこのチームにきたんだ」

 くぅー! AJサイコー!!

 まさに誰かのために発揮したパワー。これをDパワーと名付けようではないか! 10回裏の守備につく直前、「この試合勝ってきます!」と皆が藤田選手のもとに集まり各々が声を掛けたと聞いた。これ完全に藤田選手に向けてのDパワー発動ですやん。もちろん則本投手がピシャリと抑えたのは言うまでもないでしょう。