「(サッカーだけ)留学生選手がなぜ出場できないんでしょう?」

――JFAに伝えたいことは?

「昨今は特に、国際交流を考えなければいけない時代。そんな中、世界で一番普及しているスポーツであるサッカーの試合に、留学生選手がなぜ出場できないんでしょう? 他の高体連種目では留学生選手の出場が認められているのに、サッカーだけがダメなんです。JFAは我々にFIFA規則を杓子定規に押し付ける前に、FIFAに対して日本の部活スポーツというもののあり方をきちんと説明し、人身売買を対象としたルールの適用から除外してもらえるよう、どうして働きかけなかったんでしょうか?」

 では、JFAが18歳未満の留学生選手の公式戦出場を禁じるに至るまで、どんな経緯や背景があったのか? そちらも明らかにしておかなければ、フェアではないだろう。

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専務理事が語ったJFAの見解は?

 JFA側の担当責任者としてインタビューに応じてくれたのが、須原清貴専務理事である。米ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得後、ベルリッツ・ジャパン代表取締役社長、ドミノ・ピザ・ジャパン代表取締役兼COOなどを歴任。自身にプレー経験はないが、子息が通っていたクラブにお父さんコーチとして関わるようになったことからサッカーと出会い、魅了され、2級審判員の資格を取るまでに。2014年にJFA審判委員会の委員となり、16年からは非常勤理事に就任。さらに“経営のプロ”としての手腕を期待した日本協会に招かれ、18年3月からフルタイムで現職に就いている。

 今回、留学生の公式戦出場禁止の決定について取材を申し込むと、ぜひJFA側としても詳細を説明したいと、須原理事が自ら対応を引き受けてくれたことはあらかじめ記しておきたい。

須原清貴・JFA専務理事 ©AFLO

――サッカー留学で来日した18歳未満の選手の公式戦出場が2020年度から不可能になるに至った、経緯と理由を教えていただけますか。

「今回の理事会決定の背景には、FIFAの定めた国際統一ルールの存在があります。かつて、海外の資金の豊富なクラブの間では、青田買いよろしく将来性のありそうな自国外の少年選手と契約を交わし、渡航させて下部組織で育成することが常態化していました。しかしその選手が期待したほどのレベルに達しなかった場合、いとも簡単にクラブから契約を打ち切られたり、ひどい場合には選手の渡航直後、間に入った代理人が契約金を受け取ったまま姿をくらましたりする例が後を絶たなかったのです。するとその選手は不法滞在者の扱いを受けるなど、異国の地で幼くして路頭に迷ってしまいます。また資金力のあるクラブの青田買いを放置しておくと、財力に恵まれないクラブとの戦力格差がますます広がってしまうという側面もあります。そこでFIFAは世界のサッカーを統括する団体として、この人身売買とも言える状況の規制に踏み切ったのです」