テレビ業界の功績者だけが入所できる老人ホームを舞台とした昼ドラ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)が話題を呼んでいる。主人公の脚本家・菊村栄はまもなく80歳になるという設定だが、演じる石坂浩二の実年齢は76歳。きょう6月20日が誕生日である。

 倉本聰の脚本による『やすらぎの郷』では、石坂の元妻である浅丘ルリ子が出演していたり、石坂の降板が話題となった『開運!なんでも鑑定団』を思わせる番組名がセリフに登場したりと、現実とシンクロさせた部分でも注目される。ただし、菊村の出身大学は早稲田なのに対し、石坂は普通部(中学)からの慶應ボーイだ。

慶応ボーイの石坂浩二 ©三宅史郎/文藝春秋 

 慶應高校在学中より2つの劇団に所属し、テレビにもエキストラとして出演し始めた。本格的なテレビデビューは、慶大在学中の1961年、TBSのプロデューサー石井ふく子の紹介で出演したドラマ『七人の刑事』だった。このとき名前を、本名の武藤兵吉から石坂浩二に変えている。以後、ホームドラマ『ありがとう』や、名探偵・金田一耕助に扮した映画『犬神家の一族』などに出演、知的な二枚目として人気を博す。『ウルトラQ』やNHK特集『シルクロード』などナレーションの仕事も多い。

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 石坂といえば、うんちく好きとしてもつとに知られる。NHKの大河ドラマには、主演した『天と地と』『元禄太平記』『草燃える』を含め多くの作品に出演しているだけに、歴史にも一家言持つ。2001年、長寿時代劇『水戸黄門』(TBS「ナショナル劇場」版)で4代目の黄門(徳川光圀)役に抜擢されたときには、ヒゲをなくしてみるなど、史実も反映してさまざまな試みを行なったのは、いかにも石坂らしい。だが、これは大方の視聴者には不評で、“石坂黄門”は短命に終わる。石坂の得意とする大河ドラマ=歴史劇と、『水戸黄門』のような時代劇はあくまで別物だったということなのかもしれない。