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【巨人】松井、桑田、上原……「巨人軍、失われた15年」を取り戻すために

文春野球コラム ペナントレース2017

生え抜きベテラン選手の引退試合は結婚式である

 たかが引退試合、されど引退試合。ずっと応援して来た選手の引退試合は、卒業式というより好きだったおネエちゃんの結婚式に似ている。ファンにとって、それは目の前の現実を受け入れる儀式だからだ。あれだけ時間と金を注ぎ込んで、青春のすべてを捧げたのに行っちまうのか……。マジ悲しい。今夜、何かが決定的に終わったけど、人生は続いていく。さあ、胴上げでもして思いっきり飲もうぜってさ。

 で、その儀式をちゃんとしないと、時に別れを引きずるんだよ。だって、誤解を恐れず書けば、巨人周辺の一部関係者は松井秀喜に対して、ほとんどストーカー状態に見える。02年に50本塁打を放ち、28歳という最高の時に松井は突如ニューヨークへ旅立ち、そのキャリアをアメリカで終えた。

 俺もゴジラ松井は大好きだ。戻って来てくれたら嬉しい。でも、そろそろ好きにさせてやってくれ。今は離れて見守る由伸応援団、それでいいと思う。13年5月の国民栄誉賞授与式にしても、同窓会なのか卒業式なのかいまいち立ち位置が中途半端だった気がする。

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2016年の春季キャンプで臨時コーチを務めた松井秀喜 ©文藝春秋

 もちろんファンだけじゃなく、巨人の後輩選手も阿部や内海の「終わり方」を見ているはずだ。あの偉大な先輩もまた他チームのユニフォームでキャリアを終えるのか? それともファンフェスタの一環ではなく自分たちが盛大な引退試合をして送り出すのか? 一般企業でも、若手は先輩社員の生き方を見ている。あれだけ組織のために働いて最後はあんな扱いなら、俺も転職した方がいいかもなんつって。あの背中は未来の自分の姿でもある。

 だから、今度こそ阿部や内海や山口のキャリアを始まりから終わりまで目の前で見届けたい。もう中途半端な別れはうんざりだ。数年後、「失われた15年」を取り戻すかのような盛大な引退試合で功労者たちを送り出してくれないか。若手選手にこのチームで頑張ったらこんな風に送り出してもらえると証明してくれないか。

 GM交代で新しい巨人が始まるって? 冗談じゃない。

 「今」をちゃんと終わらせないと、「次」の巨人は始まらないよ。

 See you baseball freak……

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※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/3107でHITボタンを押してください。

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