きょう7月13日は、女優・のんの24歳の誕生日である。彼女が本名の能年玲奈でNHKの連続テレビ小説『あまちゃん』(2013年)に主演したのはちょうど20歳のとき、すでに4年が経つ。このドラマにより一躍国民的ヒロインとなった彼女は、このあと映画『ホットロード』『海月姫』と主演作があいついだ。それが一昨年、独立をめぐり所属事務所と対立が生じたのをきっかけに、事実上の活動休止状態となり、引退を懸念する声も上がる。
しかし彼女は戻ってきた。昨年7月、旧事務所と契約が切れたのを機に現在の芸名で活動を再開、この年11月には声優として主演したアニメ映画『この世界の片隅に』が公開される。戦前から戦中・戦後の広島の呉を舞台にした同作では、戦時下でも明るく暮らしていた主人公すずが、後半では一転して呉大空襲、さらに原爆投下と次々と試練に遭遇する。そんなすずの姿を、現実ののんと重ね合わせた人も少なくなかったはずだ。
昨年、女優の大先輩である桃井かおりと対談したのんは、自らの仕事のスタイルについて次のように語っていた。
「私は、ひとつの役ごとに、とか、ひとつの仕事ごとに、というよりも、演技とかもの作りの山が一緒になっていて、そのひとつの山を登っている感覚です。極端な性格なのか。なので他に山があるなんて見えてもいなかったというか」(のん『創作あーちすとNON』太田出版)
ひとつの仕事に入ると、ほかのものには一切目に入らない性格ゆえ、自分のなかで壁にぶち当たることもあっただろう。しかし、桃井に「大きな山にぶち当たったら登らずに回避すればいい」と教えられ、のんは目から鱗が落ちたようだ。対談では「登りにくかったら今度から避けて麓の道を通ります」と話している。
桃井をはじめ清水ミチコや矢野顕子など憧れの人たちとの対談を収めた前掲書では、演技以外にも絵や脚本などを手がける「創作あーちすと」を名乗った。雌伏の期間をすごした分だけ、これから活動の場が広がることを期待せずにはいられない。『あまちゃん』の脚本を手がけた宮藤官九郎は、再来年の大河ドラマも担当することになったが、彼女の出番はあるのか、それも気になるところだ。