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12年プロで生き残ってきた選手の残酷な結果は見たくない

 こっちが勝手に心配していた今井の2015年オフの自由契約はなかったが、2016年は1軍で登板がなかった。5月に5日間だけ1軍にいたが、登板することなく落ちた。そして今年6月、ようやく1軍に上がる機会がきた。でも実績に乏しい中堅の中継ぎ投手に、1軍のゲームで投げる機会ができるかはわからない。少し前、同じように1軍にあがった27歳の佐藤祥万は、2週間1軍にいたが登板機会がないままファームに戻った。

 今井には、ホークス戦の9回表に登板機会が巡ってきた。ドラ1の加藤かと思ってたけど。マウンドにあがった今井を見て、解説していた前監督の野村謙二郎が「今井、ちょっと腕を下げましたね」と指摘する。久しぶりにみた今井のフォームはスリークォーターになっていた。野村謙二郎は監督をしていたとき、今井に「なんとか1軍定着してほしい」と期待していたはずだ。

 自分は中継を観ながら、SNSの実況トピで何か書き込もうか、と思って悩んでしまった。まー「頑張れ今井!」でいいんだが、これ以上なにを頑張れ、と言ってるのか。こっちが言わなくても今井は頑張るしかない。「頼んだぞ、今井」と書き込んだ。でも今井には悪いが、こっちもそこまで信頼していない。今井がいないと、このあとのシーズンが厳しい、とも思ってない。ただ、いい投球をしてなんとか生き残って欲しい。12年プロで生き残ってきた選手だ。残酷な結果は見たくない。この登板が現役最後の1軍登板になる可能性もあるな、と思っていた。

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 今井は先頭打者を抑えたが二人目にヒットを許した。次は送りバントで2アウト2塁。あと1人だが得点圏にランナーがいる。もう1点もやりたくない展開だから、1点でも取られると今井の印象はかなり悪くなる。打席には長谷川で次は松田。松田に回して長打というのが最悪だ。

 長谷川には四球。2アウト1塁2塁。厳しい。解説の野村謙二郎がしきりに「もう少し三遊間を閉めたほうがいい」と言う。三遊間を転がって抜ける打球で1点入ることを心配しているのだ。いま見た今井の球筋だと、三遊間に転がりやすい気がすると言ってる。もしかしたら野村謙二郎も、ここでの1点がゲームの行方だけでなく、今井のキャリアに影響することを考えてるのかもしれないな、と勝手に思った。

 松田は空振り三振で、今井はなんとかゼロに抑えた。ホッ。結局、ゲームには負けてしまったが。今井啓介にどのようなエールを送ればいいのだろう。もちろん頑張って欲しい。でももう長く頑張ってる。最後の悪あがきかもしれないスリークォーターがうまくハマることを祈ってる。今井のキャリアに幸あれ! そう願ってるのは間違いないんだ。

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