世田谷区、二子玉川駅からほど近い楽天本社にサッカー界のスーパースターが集結した。

 アルゼンチン代表の天才ドリブラー、メッシ。メッシに迫る才能を持つブラジル代表、ネイマール、スペイン代表のピケ、そしてトルコのベテラン、アルダ。サッカーファンなら一度は見てみたいスター選手が一度に4人も顔を揃えた。

©getty

 楽天は7月、世界で最も人気のあるスペインの名門チーム、FCバルセロナ(愛称=バルサ)と4 年間(オプションでプラス1 年)の「グローバルパートナーシップ契約」を結んだ。4人はバルサの主力選手である。

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 近く開幕する2017/18シーズンからバルセロナの縦縞ユニフォームの胸に「Rakuten」のロゴが入る。それを記念しオフシーズンを利用して日本を表敬訪問したのだ。

プロスポーツ史上初の320億円で契約

 メイン・グローバル・パートナーの契約金は、オプションを含め5年間で320億円を超える。プロスポーツ史上、空前の金額だ。楽天の三木谷浩史社長は「Rakuten」を真のグローバルブランドにするための大勝負に出た。これから少なくとも4年間、世界でもっとも愛されるチームの胸で「Rakuten」のロゴが輝くのだから、宣伝効果は計り知れない。

 7月13日午後3時、楽天本社に足を運ぶと、興奮した楽天社員がエントランスロビーで黒山の人だかりを作っていた。メッシの「入り待ち」だ。

 楽天社員がこれほど熱狂するのはプロ野球、東北楽天ゴールデンイーグルスが日本一になった2013年以来だろう。大リーグ、ニューヨーク・ヤンキースに移籍する前の田中将大投手らが凱旋すると、当時、品川シーサイドにあった楽天本社は興奮のるつぼと化したものである。

 だが今度はそれをも上回る。欧州リーグ最高のサッカー選手に与えられる「バロンドール」を5度も獲得したメッシや、ブラジル代表の「背番号10」を背負うネイマールは、地球規模のスター。それが自分たちの会社に来るのだから、興奮するなという方が無理な相談だ。

報道陣も集結 ©大西康之

 楽天本社に設えられた記者会見場にメッシらが姿を現したのは午後3時30分。定刻から30分遅れだが、誰も文句を言うものはいない。スーパースターにはそれくらいの威光がある。バルサのマークが入ったお揃いのポロシャツとジーンズで現れた4人は、一人ずつ壇上に上がり、三木谷社長とハグを交わした。

メッシともハグ ©大西康之

 妻で歌手のシャキーラ共々、楽天のスポンサーシップが決まる前から三木谷社長の友人だったピケは、とりわけ親密そうなそぶりを見せた。

「More than a partnership」

 最初にマイクを握ったのは、そのピケである。

「楽天との関係は『More than a partnership(ただのパートナーシップ以上のもの)』。楽天とバルサの共通点は、それぞれの仕事を本気で楽しんでいることだ。我々は共通の価値観を持っている。楽天はバルサのファミリーだ」

 ものすごいサービスぶりである。この記者会見は、インターネットやテレビを介し、世界で数十億人のサッカーファンが見ているはずだ。「More than a partnership」はバルサのスローガンである「More than a club(サッカークラブ以上の存在)」をもじったもの。サポーターにとってバルサは単なる贔屓のサッカーチームではなく「人生そのもの」に近い存在だ。そのバルサの大黒柱に「家族」とまで言われたのだから、楽天にとっては百人力。惜しむらくは、まだ世界の多くの人が「Rakuten」のサービスを知らないことだ。ピケの言葉に応えるためにも、楽天は世界をあっと言わせるサービスを生み出さねばならない。