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カブレラが守備に就きたがっていた理由

試合前の練習中 元チームメートの西武・十亀とロッテ・涌井 ©中川充四郎

 プロ野球界は独特の発声での挨拶が行われます。正式にはその日の初対面では「おはようございます」なのですが、「オヤッス!」とか「ウイッス!」など、うまく言葉に表せない挨拶が交わされます。ただ、ナイターの場合、外国人選手に向かって「グッドモーニング!」と声を掛けるケースも見かけますが、ちょっと違います。「おはようございます」の中に「朝」は入っていませんので。外国人選手は「オハヨウゴザイマス!」とハッキリした日本語で挨拶することが最近増えてきました。思わず微笑んでしまいます。

 試合が始まって、初回の攻撃時に1、3塁ベースコーチの行動を見るのも興味深いものです。相手のベンチ前を通ってコーチャーズボックスに向かう際、走りながらヘルメットを取って頭を下げるコーチや、一旦ベンチ前で立ち止まり深々と頭を下げるコーチと様々ですが、それも個性のひとつなのでしょう。また、塁上付近でも選手同士や塁審との挨拶も頻繁に目にします。これはこれで良い事なのですが、とくに外国人選手に多く目に付くのが塁上での会話。ひと言、ふた言でしたら構いませんが「会話」はどうでしょう。まぁ、安打を放った相手選手のユニホームを手のひらで触り、自分のユニホームにこすりつけて、ツキをもらう動作まではOKでしょう。

 ケタ違いのパワーを誇ったアレックス・カブレラは、指名打者としての出場の時は機嫌を損ねていました。チームの方針には従わなければいけませんが、しばらくして1塁の守備に就きたい理由が判明しました。元々おしゃべり好きのカブレラは練習時間の合間でも携帯電話を離しません。そんな性格ですから、1塁手として相手選手が塁に来るとしきりに話しかけます。自チームではなく相手チームの選手から「情報収集」したかったのでしょうが困った選手でした。

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指名打者で出場していたときに機嫌を損ねていたアレックス・カブレラ ©文藝春秋

 東尾修元監督の持論は「相手チームの選手とは仲良くなるもんじゃない。せめて投手同士、野手同士なら分かるけど、試合で直接対戦する相手とはとんでもない話」。最近この意識は薄れているように見えます。時代の流れと言ってしまえばそれまでですけど、その「成果」が乱闘シーンの激減でしょう。当然好ましい場面ではありませんが、選手同士の相手に対する意識の変化からかと思われます。近年の危うい場面は、日本人選手同士はほとんど見かけず、概ね外国人選手が絡んでいるものですから。

 お互いの挨拶は潤滑油として必要ですが、戦う現場では軽めのほうがスマートだと思います。結局は本人の意識次第ということになりますね。

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