三菱商事、ソデックス、ローソン、サントリー……。私は社会人になってからこれまで、商社、外食、小売り、製造業と、さまざまな場所で仕事をしてきました。私がそこで何を考え、なぜ挑戦し続けることができたのか。現在までのキャリアの中から、本当に役立つエッセンスをこれからお話ししたいと思います。
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働き方をコントロールすべき
現在、政府を中心に働き方改革が推進されていますが、皆さんの会社では、どんな働き方が求められているでしょうか。
経営戦略上、組織の生産性が低いというのは大変な問題です。だからこそ、生身の人間の生産性を高くするためには、休むことは大変重要なことだと考えています。私は夜中まで仕事をしている人が偉いなんてまったく思いません。そんなことを何日もやっていたら、生産性は悪くなるに決まっています。それは会社にとって大きなマイナスです。こうした働き方改革は、経営者として当然やらなければいけないことなのです。
しかし、私自身は精神論的な話が嫌いではありません。ガッツも重要ですし、それが組織のモチベーションを高めていくことにもつながります。ただ、これまではバランス感覚として、組織のほうを重視しがちだったのではないでしょうか。
これをもう一度見直して、働き方をコントロールすべきなのです。本当に疲れると前向きな議論や仕事はできません。そうした当たり前のことを考えていくことが必要なのです。
ただ、その一方で、“濃く”仕事をすることも重要です。濃く仕事をして、その後は必ず休むということです。濃く仕事をすることによって人は育ちます。ただ、いつも濃くやっていたら仕事は続きません。薄いときは薄くやっていい。だからこそ、「ここぞ!」というときに濃く仕事ができることが大切になってくるのです。
結果に対して組織で評価しているか
単に残業をしてはいけないということではなく、今ここで集中していかなければいけないときには集中していく。それは、その人がプロフェッショナルになるうえで、そのタイミングが来たということです。やはり社員の育成という観点からすれば、濃く働いてもらうことは重要なことなのです。
しかしなぜ日本企業では、こうした働き方が問題になってくるのでしょうか。それは、結果に対して組織で評価をするということをやってこなかったからです。みんなでやって駄目だったらしょうがない。そうした諦めや満足感が日本企業にはもともとあるのです。
他方、アメリカの場合は目的に対してシビアです。ある目的のためには今まで優秀だったスタッフも、違う目的にとって優秀ではないとわかれば、躊躇せずに外すわけです。つまり、アメリカでは目的のためにきちんとした意思決定ができるかどうかが重要なのです。
しかし、日本人は嫌われたくないことが先に立つんです。田植え文化ですから、嫌われることを極端に嫌がってしまう。だから、一緒に何か物事をやろうということは得意なのですが、何かを変えていかなければならないときには、非常に動きが鈍るのです。