なぜ変わりたいけれど変われないのか
むろん日本式にもアメリカ式にもメリット、デメリットはあります。ただ、日本はどうしても流れに任せてしまうところがあります。もしそういう感覚でも、日本で生きているなら、ある程度生きることができるんです。仮に日本の人口が今も増え続けていて、活力があって、若い世代が活き活きとやれる時代ならそれでもいい。
しかし、グローバルに出ていくとなれば、いかに自分と違う考え方とアウフヘーベンするのかということが課題になってくるわけです。
その点、韓国は違います。国内のマーケットが小さいために、積極的に海外に打って出なければならないからです。日本は国内だけでも快適ですから、外へ行かなくなっているんです。将来どうなるかわからない、大変だと思いながらも、何とか今を生きられるようになっています。だからこそ、 同じ過ちが繰り返されてしまうのです。
今の日本人もメンタリティは変わっていません。変わらなければいけないことはわかっているのですが、どうしても変われないのです。
しかし、現在の働き方改革が進み、生産性を上げることができれば、高齢者や女性の労働参加を呼び起こすことも可能になりますし、生産性の向上と労働力の供給を同時に行うことができるのです。その結果、日本経済を引き上げていくことも可能になるのです。
誰かがやれば、必ず動き出す
今、宅配便の配達員やバスの運転手、飲食店のアルバイトが足りないと指摘されるように、人手不足は深刻な状況に陥っています。その結果として賃金の引き上げという現象が起こっています。その意味では、デフレが終焉し、賃金が次第に上昇するという今までとは違う環境になってきているのは事実です。では、これからどうなっていくのでしょうか。
私は、日本はやらなければならない環境に追い込まれたら、必ずどこかで問題解決する力が機能すると考えています。ただ、それまでには時間がかかるんです。でも、誰かが最初に動き出したら、みんなが一斉に動き出します。今もみんながそうだと思いながら、誰がやるのか見ているわけです。誰かがやれば、必ず動き出すのです。
聞き手:國貞 文隆(ジャーナリスト)
新浪 剛史 サントリーホールディングス株式会社代表取締役社長
1959年横浜市生まれ。81年三菱商事入社。91年ハーバード大学経営大学院修了(MBA取得)。95年ソデックスコーポレーション(現LEOC)代表取締役。2000年ローソンプロジェクト統括室長兼外食事業室長。02年ローソン代表取締役社長。14年よりサントリーホールディングス株式会社代表取締役社長。