昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

【日本ハム】谷元圭介はこれからもずっと僕の誇りだ

文春野球コラム ペナントレース2017

谷元圭介は僕の誇りだ

 6球目、いちばん大切にしている球にこだわった。外角低目のストレート。菊池はセカンドフライを打ち上げる。直球でフライアウトを取るのが谷元の真骨頂だ。田中賢介が大事に捕球してゲームセット。ファイターズ10年ぶりの日本一だ。谷元はマウンドでバンザイ! 選手らがベンチから飛び出してくる。小柄な谷元はあっという間に囲まれて見えなくなる。やがて栗山監督の胴上げが始まる。

 僕は「やったぁ〜!」「よっしゃ、たにもん!」とか何とか叫びながら、天高く拳を突き上げる。で、ぽろぽろ男泣きだ。ただ場所が球場ではなくて、京成線の電車ホームだ。大阪からの仕事帰りだ。試合序盤は関空のテレビで見て、成田に着いたら4対4の同点だった。成田到着と同時にラジオ中継を聴いて、そこから6点取って京成線ホームで号泣だ。連れが「この男は野球で夢が叶ったところで、別に怖くありません」と説明してくれていた。すごくぶざまでみっともなかった。でも、僕の人生なんかそんなもんだ。どんなにぶざまでもいいじゃないか。顔べたべたの涙ぽろぽろでいいじゃないか。ファイターズが日本一になったんだよ。文句なく最高の瞬間。

     ※     ※

 当たり前の話だが、この機会に明言しておく。谷元圭介は僕の誇りだ。僕は物件の値上がりを当て込む不動産屋じゃないから、どんなトレードも損か得かはあんまり考えない。「30歳を過ぎて国内FA権を取得した谷元」の今がピークなのかどうかも知らない。が、損だろうが得だろうがピークだろうが伸びしろがあろうが、断じて谷元は誇りだ。もちろん中日への金銭トレードは感情が追いつかない。チームの低迷を思えば貴重な戦力を失って、今季はもう勝つ気が失せたのかと思う。

金銭トレードで中日に移籍した谷元圭介 ©文藝春秋

 が、同時に僕はファイターズの考え方を知っている。この球団はアメリカ的なマネジメントの最右翼を行っている。トレードにネガティブなイメージを持たないのだ。MLBではトレード期限ぎりぎりで、ダルビッシュ有、青木宣親の移籍が決まったが、それを非情とは考えないだろう。仕事のある場所に出してやる感覚だ。谷元は望まれて中日に行くのだ。あの男が半端な仕事をするわけがない。この先もずっと僕の誇りであり続ける。

 「アメリカ的なマネジメントの最右翼」が今後、どう転がっていくのかは歴史が答えを出すだろう。球団主導で現場は疲弊しないのか。功労者を大事にしないイメージはファン離れを招かないか。谷元圭介は「正直、驚いています。気持ちを整理するのは難しいですが、必要とされて移籍するからには頑張るしかないと思います」とコメントを発表した。胸のつぶれる思いだ。

谷元圭介のビクトリーカード ©えのきどいちろう

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/3619でHITボタンを押してください。

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春野球をフォロー