住人を刺殺した犯人は今も……
その建物では、かつて住人の50代男性が刺殺体で発見される、という事件が起きていました。その後、豪邸ゆえに高額な固定資産税を相続人が納められず、遂には差し押さえられてしまった……ということなのでしょう。
ネットで話題になったときには、すでにオークションは締め切られていて、事前に唯一入札をしていた男性が「1111万1100円」で落札しました。ちなみに、もともとの殺人事件は現在も未解決で、犯人は未だに捕まっていません。
なぜ事故物件であることを明記したのか?
さて、この「ヤフオクで売られた事故物件」には、2つのポイントがあります。1つは、千葉市が出品先としてヤフオクを用いたということ。ただ、この手法は何も珍しいことではありません。
千葉市の税金滞納者に対する競売(公売)となると、千葉市単独で全ての手続きが行われます。しかし、実際に「差押・売却」に至る事案はあまり多いわけではないので、たとえば「千葉市独自の公売オークションサイト」を作っていては、あまりに効率が悪すぎるのです。そのため、千葉市が手数料を支払って、ヤフオクという既存のシステムを利用するというのは合理的な判断です。
そしてもう1つのポイントは、千葉市が「ここは事故物件です」と明記してオークションに出品したこと。「なぜ隠さないのか?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、理由は非常にシンプルです。つまり、隠す動機がないからなのです。
この場合、千葉市は固定資産税などを回収するために、滞納者の物件を競売にかけています。ただ、実際の売却額からすれば、回収したい「滞納額+利子」は“安いもの”なのです。たとえば、「滞納額+利子」の200万円を回収するために、相場で2000万円ほどの価値がある物件を競売にかけるとします。最終的に、ここが2000万円で売れても、あるいは500万円で売れたとしても、千葉市が手にするのは回収額の200万円だけで、残りは滞納者に還付されます。