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観光業はアベノミクスの“数少ない成功例”だった

 日本にとって中国は最大の貿易相手国であるが、それと同時に、インバウンド消費の最大の“お客様”でもある。日本政府観光局によると、2019年の訪日外国人数は約3188万人だが、そのうち約959万人が中国人だった。

 その観点からロイター通信は、「観光業の拡大は、アベノミクスにおける成長戦略として7年前に打ち出され、数少ない『成功例』の1つであった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって、観光業への過剰依存が問題視され始めた」と報じている。日本が中国本土からの全面的な入国制限に踏み切れないのは、経済的な要因だけでなく、頼りにしていた“アベノミクスの成功例”への打撃を恐れたからではないか……とする報道だ。

2019年は約959万人の中国人観光客が訪れた ©AFLO

医学的根拠のない一斉休校は「政治的パフォーマンス」

 そんな中、日本政府は2月27日、全国の小中高に3月2日からの臨時休校を要請するという、異例の発表を行った。これに対しドイツの国営放送ドイチェ・ヴェレは、「この決断によって多くの親は仕事を休み、子供の面倒を見なければならなくなった。多くの国民はツイッター等で安倍首相を批判している」と日本国内の反応を紹介しながら、政府がこの“要請”の医学的根拠を示せていないことを指摘。「今回の要請は、『決断力がある』行動をする意思がある、と見せつけるためにとられたとも考えられる」と、一種の政治的パフォーマンスではないかと分析している。

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 また、ニューヨーク・タイムズ紙は、新型コロナウイルスは高齢者へのリスクが高いこと、そして日本は高齢化率(全人口のうち65歳以上が占める割合)が世界一であることに言及しながら、次の点を指摘した。「(日本の対応策は)全国の小中高を1カ月間休校にする、というもので、高齢者ではなく若者をターゲットとしている。若者はコロナウイルスへの感染リスクが低く、感染した際にも重症化する可能性が低いため、よりリスクが高い高齢者を守ることにはならない」

 同紙は今回の“一斉休校”が、結果的に正しい決断となる可能性を否定してはいない。だが、同じく高齢化が進んでいるイタリアや韓国では、「専門家のアドバイスに従い、高齢者に対し多くの検査を行い、治療と隔離に専念している」にもかかわらず、世界一高齢化が進んでいる日本で、真っ先に“感染リスクの低い若者”を守る対応策が打ち出されたことに、戸惑っているようだ。