その根拠として挙げられるのは、「テイラー氏の行動が、特殊部隊員としての行動様式から外れている」という点である。
「つねにリスクコントロールのプランニングを緻密におこなう元特殊部隊員なら、『玉響』で税関職員から『では中身を見せて』と言われる可能性がゼロではないことをわかっていたはずだ。もし、開けることを命じられたとき、それを強引に拒否することは難しいことも、当然、想定していたはずだ」(元グリーンベレー関係者)
黒い箱はダミーだった可能性
関空のプライベートジェット専用ラウンジの税関検査は通常の空港の出国手続きよりも甘かったとしても、そこには相当なリスクが存在する。厳しい職員に当たるかもしれず、あるいはその日の職員の気分次第で態度が変化する可能性も否定できない。
ゆえに特殊部隊出身者なら、そのリスクをおかしてイチかバチかに賭けるようなことはしない、というのだ。
「特殊部隊は“幸運に賭ける”ことは絶対にしない。リスクコントロールのプランニングができなければ、作戦を実行しない。万が一、箱を開けられたときのダメージは計り知れないからだ」(同前)
そのように考えれば、一連のリークは日本の捜査当局を欺くために意図的に流され、関空から運び出された黒い箱は「ダミー」だった可能性もある――という見方が浮上してくる。
それでは、ゴーン被告の本当の逃亡ルートはどこだったのか?
関空以外に、ゴーン被告が出国できた場所はあるのだろうか?
「文藝春秋」3月号および「文藝春秋digital」掲載の麻生幾氏のレポート「レバノン逃亡『3つの嘘』」は、米国特殊部隊出身者らの証言をもとにゴーン被告の逃亡ルートを検証し、驚くべき可能性を提示する。
※「文藝春秋」編集部は、ツイッターで記事の配信・情報発信を行っています。@gekkan_bunshun のフォローをお願いします。
【文藝春秋 目次】芥川賞発表 受賞作全文掲載 古川真人「背高泡立草」/<特集>医療を歪める「ニセ科学」本庶佑ほか/石破茂「安倍総理よ」
2020年3月号
2020年2月7日 発売
特別定価1000円(税込)