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異色のベッドシーンで賛否両論! 映画『Red』の“容赦ない濡れ場”が日本社会に突きつけたもの

これほど極端に男女で温度差のある映画も珍しい

2020/03/21
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男にとってかくも容赦なく、不都合な性愛

「塔子の自己中心的な生き方には腹が立つ」そして「あのベッドシーンには興奮しない」。男たちが呟くそれは自分たちが知らないものへのアレルギー反応であり、だが女たちは、その塔子の選択とベッドシーンにこそ泣き濡れる。

 不倫といえば、中高年男性が大好物とするコンテンツのはず。しかも激しい性愛のシーンが幾度となく投げ込まれる映画なら、なおさらだ。だが、これまで男たちが自分たちの願望を自分たちの視線で弄ぶように描いてきた甘い疼痛のようなファンタジーとは異なり、女が本性をあらわにして女の側から描く不倫の性愛は、男にとってかくも容赦なく、恐ろしく、不都合なのである。

©2020『Red』製作委員会

 心も体も解放し、自由に美しくなっていく主人公、塔子を体当たりで演じる夏帆が見せる身体の紅潮が美しい。そして鞍田役の妻夫木聡は、今作のために体重を落とし、40歳目前の枯れ始めた色気を放つ。自覚なく塔子を傷つけるエリート夫・真を演じる間宮祥太朗の新鮮な一面も魅力的で、塔子に好意を寄せ、自由な婚外恋愛をそそのかす小鷹役、柄本佑の演技はただひたすら見事だ。

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 タイトルの『Red』とは、女の体温を上げ、欲望を刺激し、変化を促し、ここではないどこかへと導く何か。惜しむらくはちょうど2月下旬公開以来、新型コロナウイルスの影響で娯楽業界全体の客足が著しく影響を受けていることだが、『Red』はその中でも着実に観客を集め、SNSで語られている作品でもある。「男がたじろぎ女が濡れるベッドシーン」には、まだ間に合う。

©2020『Red』製作委員会
異色のベッドシーンで賛否両論! 映画『Red』の“容赦ない濡れ場”が日本社会に突きつけたもの

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