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連載クローズアップ

ママ、妻、お嫁さん――。誰かのものであり続けた彼女が考える「どう生きるのか」

三島有紀子(映画監督)――クローズアップ

三島有紀子監督(撮影:池田正之)

 2月21日より全国公開される映画『Red』で、三島有紀子監督は、言葉(せりふ)の余分を削ぎ、無言を交わす間で男と女の心情を見せている。

「夏帆さん演じる塔子には、夫も子供も、住まいもある。そこに、かつての恋人・鞍田(妻夫木聡)が現れ、人生を問う選択を突き付けてきます。私は、この原作小説に出会ったとき、塔子は何を選び、どう生きていくのか、それを見てみたいと思いました」

 原作は島本理生さんの同名小説。何が女性を生きづらくさせているのか、心と体が放つ本音で詳らかにされ、累計20万部が発行された。

 監督が「ベスト」と言い切る配役で臨んだ映画化は、主役のふたりに加え、塔子の夫に間宮祥太朗。ふたりの同僚に柄本佑。さらに片岡礼子、酒向芳、山本郁子、浅野和之、余貴美子が並ぶ。

「ここまでの役者さんを前に、芝居について細かく言う必要はないと思いました。一番大事にしたのは、夏帆さんは塔子としてそこに立っていたか、いまの場面に妻夫木さん自身の癖は出てはいなかったか。塔子と鞍田に見えなかったのなら、何が原因か、考えていただき、シーンに求められているものが表れるまで待つ。それが私の役割でした」

 ママ、妻、お嫁さん――。誰かのものであり続ける塔子の心に、やがてある思いが発露する。どう生きるのか、と。

「自分の気持ちより、周囲の思いに身を委ねてきた塔子は踠(もが)きはじめます。それは、塔子を愛するという“生き方”を決めた鞍田が現れたからです。実は、塔子は、今日の私たちでもあると思いました。私たちは、自分がどう感じているかよりも、SNSなどで他者の意見を求めることが当たり前になっている。でも、それは自分を殺すことであるし、尺度を世の中に求めて生きることでもある。それは怖いことだと感じるのです」

 熱く、強く心が色づく。その思いで身体が染まるとき、自分を生きることになる。

みしまゆきこ/2003年NHK退局、09年監督デビュー。17年『幼な子われらに生まれ』でモントリオール世界映画祭審査員特別大賞受賞。

INFORMATION

映画『Red』
https://redmovie.jp/

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