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山口の中高生と映画を撮ってわかった「人はなぜ演技をするのか。なぜ映画は物語を描くのか」

映画監督・三宅唱インタビュー

2019/03/26

 今、日本映画界で大きな注目を集める若手監督がいる。昨年、佐藤泰志原作の『きみの鳥はうたえる』が話題を呼んだ三宅唱。20代の若者たちの日常を瑞々しく捉えた前作に続き、新作『ワイルドツアー』も私たちを驚かせてくれる。山口情報芸術センター(YCAM)の滞在型映画制作プロジェクトから生まれた本作。出演者は全員、地元の中高生。劇中では、元々YCAMで実施されている、野山に生えた植物からDNAを採取するワークショップを舞台に、中高生たちの友情や甘酸っぱい恋愛模様が描かれる。前作とは大きく異なり、とてもミニマルな制作スタイルだが、こちらも見事な青春映画に仕上がった。

三宅唱監督(撮影:神山靖弘)

繊細かつ大胆な、ワイルドな姿

──『ワイルドツアー』は、まず、YCAMに8カ月滞在して自由に作品を撮る、という企画からスタートしたそうですが、どんな作品にするか、プランはいつ頃決まったんでしょうか。

三宅 当初は、何をやるか全く決めずに滞在し始めたんです。たとえば僕が東京からスタッフやキャストを全員呼んで、ふだん通り映画を作るという方法もあった。でもそれだとYCAMと一緒につくる意味がない。今回はこの街で出会った人たちと映画のアイデアをゼロから一緒に考えようと決め、まずはとにかく散歩しました。そこで山口の自然や、地元の中高生たちに興味が湧きました。YCAMは国内外のアーティストが日々出入りしている場所ですが、同時に中高生の放課後の憩いの場にもなっていて、勉強したり友達と遊んだりしてるんですよ。彼らと一緒に映画作りができたらおもしろいかもな、21世紀生まれの人間と一緒に仕事してみたいな、というのが出発点。そこでまずは中高生を対象に、2日間で映画を作ろうという企画を実施しました。20人くらい集まってくれて。

──そのときに作った作品はどういうものだったんでしょうか。

三宅 シナリオは、女の子ふたりが男の子ひとりを取り合う、みたいな恋愛モノの短編です。参加者を3つのグループに分けて、僕が書いたシナリオをもとにそれぞれ撮ってみよう、という形式です。僕はみんなの見守り役で、彼らが自分たちで演出を考えて、カメラポジションも考えて、編集もする。同じシナリオなのにグループごとに解釈や狙いが違うから、全然違う映画ができました。

──そこに集まった子たちと一緒に改めて長編映画を作ろう、ということで、『ワイルドツアー』の制作が始まったんですね。

三宅 全員に出演オファーを出しました。みんな、なかなか普通の映画では見ることができないような「ホンモノの中高生の顔」で、惹かれました。はじめての恋や将来のことで真剣に悩んでいたり、と思ったら全力でふざけ出したり、延々とスマートフォンをいじっていたり、野生動物みたいでかっこいいというか、笑えるというか。そういう彼らの繊細かつ大胆な姿を撮りたくなった。僕はそれを今回「ワイルド」と呼んでるんですが。