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映画の最初と最後では顔つきが全然違う

──映画のなかでは、三宅監督が大好きだというトニー・スコット監督の『デジャヴ』のような素晴らしいシーンも出てきますね。パソコンをいじりながらモニターで自分が撮った映像を見る主人公たち、という場面。カメラが反転すると、撮影された映像越しに、楽しそうな彼らの顔が見えます。

三宅 モノマネはなるべくやらないと決めているんですが、『デジャヴ』はとんでもなく好きでして、ついやってしまいました。『デジャヴ』を繰り返しみながら、これはセットが2つあるんじゃないか、そうじゃないとありえないカットだろ、と。それで僕らもセットを試行錯誤して作りました。

──別のセットでもう一度同じ演技をする、となると、かなり本格的な演技になるわけですよね。

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三宅 この場面に限らず、撮影が進むにつれて、どんどん高度な演技になっていきましたね。ほぼ順撮りをしてるので、映画を見ていると、彼らが実際に成長していったさまがよくわかる。最初と最後では彼らの顔が全然違いすぎて、思わず笑っちゃうほどです。

© Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM]

メジャーな商業映画とインディーズ映画

──三宅さんは、以前、トークイベントで「『きみの鳥はうたえる』は初めての商業映画とよく言われるけれど、今までも依頼を受けて映画を作り、それを自分たちなりに公開して商売してきたので、これが初めての商業映画ではない」とおっしゃっていましたよね。『ワイルドツアー』についても、これまでの作品との違いはそれほど感じないのでしょうか。

三宅 そうですね。『ワイルドツアー』は小品に思われるかもしれないけど、YCAMという市の施設からのオファーという責任感もあるし、出演した中高生の後ろには家族親戚一同がいるし、映画を作る緊張感はいつも以上だったかもしれません。だって、人生で初めて参加する映画が微妙だったら最悪ですよね。それを考えると商業性も自然と帯びるというか、とにかく、面白くないとやばい、というのはいつもと変わりません。それに、ただ面白いだけではYCAMも山口の人も納得してくれない。

──映画監督としての方向性、みたいなことは考えたりされますか? 『きみの鳥はうたえる』がいろんな賞を受賞されて、これからはいわゆるメジャーな商業映画をどんどん撮っていくのかなと期待されることも多いと思いますし、一方で『ワイルドツアー』のような作品を発表されると、今後もインディペンデントな映画作りのほうをずっと続けていくんだろうか、と思われたりとか……。

三宅 あんまり人にどう見られるかは気にしたことないんですけど、「こうあれ」みたいに言われると、なんであれイラッとするタイプなので(笑)。iPhoneで撮る『無言日記』は僕の中で最も小さな作品だけどずっと続けていきたいし、『ミッション:インポッシブル』シリーズもいつか撮ってみたい。12くらいなら撮れるかなと(笑)。取り組み方は変わらないけど、その振れ幅の中で、どこまでおもしろいことができるか、とは考えます。