好奇心にしたがって境界を踏み越える
──今の日本映画においては、商業映画の世界と、自主映画や規模の小さいインディーズ系の映画の世界との差はやはり大きい気がするんですが、三宅さんとしては、その垣根はあまりないということですか?
三宅 ないですね。編集やライターの方も、大手媒体で書くのと同時に、自分のZINEを出すこともあると思うんです。その熱量って基本的には一緒ですよね? 僕も同時にごちゃごちゃやっている。そうしないと食えないし、楽しくないし。駅前の自分の店でこだわりの一品を出しつつ、それと同時に、コンビニとコラボしてめちゃめちゃ美味いスイーツを全国に出したい。映画の場合は一人でやるもんじゃないので、誰と一緒に仕事をするかというのが大事だと思っています。その相手次第。
──大きいシネコンで上映する映画は作らない、ということでもない。
三宅 そうですね。シネコンで見た映画の数の方が多いですし。
──『ワイルドツアー』の中で、立ち入り禁止区域がたくさん出てきますよね。でも登場人物たちは、わりとあっさりそこを踏み越えていく。ある意味で、三宅さんもどんどん立ち入り禁止の場所に入っていくんでしょうか。
三宅 さっきごちゃごちゃって言いましたけど、自分がそうするぞ、っていうより、どうせそうなるよね、という感覚です。自然とそうなるんじゃないかなと。僕が生きている間は、いわゆる大きな映画というものも依然としてあるだろうし、一方で個人映画はどんどん増えるわけで、その間にいればいろいろごちゃごちゃやることになると思います。それと、『ワイルドツアー』の彼らがどんどん境界を踏み越えていくのは、単純に好奇心が強いからですよね。境界を越えるのは結果であって目的じゃない。自分もその都度、好奇心にしたがって映画を作っていければいいなと思います。その結果、いろんな境界がごちゃごちゃになるのは……まあ、いいんじゃないですかね(笑)。
聞き手・構成=月永理絵
みやけしょう/1984年北海道生まれ。2007年映画美学校フィクション・コース初等科を修了。09年、一橋大学社会学部卒業。『Playback』で第22回日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞を受賞。昨年、柄本佑、石橋静河、染谷将太を起用した『きみの鳥はうたえる』が高い評価を受けた。
INFORMATION
『ワイルドツアー』
3月30日(土)より、ユーロスペースほか全国順次ロードショー
https://special.ycam.jp/wildtour/