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新発見・初公開の作品も

伊藤若冲《蕪に双鶏図》

 展示の目玉とされるのが、新たに発見されこれが本邦初公開となる《蕪に双鶏図》だ。タイトルの通り、そこかしこに蕪が植えられた地面の上を、精細に描き込まれた鶏が歩き回っている。蕪の葉のかたち、鶏の羽毛の質感と動きなど、つい見入ってしまう細部が満載のこの絵、どうやら若冲が絵に手を染め始めた最初期、30代のころの作品と目される。

 何を描き出したいのか、どんな境地を目指すのかが明快だからだろう、駆け出しの時代の作とはいえ堂々たる貫禄が感じられるし、明らかに若冲の筆によるものだろうという個性もくっきり表れ出ている。

 同作以外にも鶏を描いた作品は多数出品されている。時期ごとの描きっぷりの変化を追ってみるのも楽しい。

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 他にも生きものならば鹿や蟹、魚、龍や鳳凰……。また数々の草花、達磨、阿弥陀如来、髑髏などなど。目に見えるものから見えないものまで、何でも描き尽くした若冲の、「描くことに捧げた生涯」の一端を堪能してみよう。

伊藤若冲「群鶏図押絵貼屏風」右隻
伊藤若冲「群鶏図押絵貼屏風」左隻