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「同じ“好き”でも何が違う?」写真家が“弟と夫”を撮り続けて探ってきたこと

アートな土曜日

2019/12/28

 写真家・伊澤絵里奈には、大好きな相手がふたりいる。ともに仲良く育ってきた弟。そして、数年前に結婚した夫。両者を被写体にして撮り続けてきた写真で構成された個展が開かれている。東京・目黒にある金柑画廊での「静けさを掬う」展。

 

弟と恋人への愛情は、どこがどう違う?

 伊澤は姉弟そろって千葉で育った。ともに成人を迎えるころになっても当たり前のように仲良くしていると、友人からは「珍しいね」と言われた。これがふつうかと思っていたものがどうやらそうでもないらしく、弟との関係性が気になりだして、カメラを向けるようになった。

 そのうち伊澤本人に恋人ができると、彼氏との関係や距離は、弟とのそれとどう違い、どこまでは同じなのだろうかと考えるようになった。

 

 弟とは血がつながっていて、切っても切れない関係なのはまちがいない。一方で、彼氏とはそういうつながりがないのに、愛情はしっかりとある。

 どちらも「好き」の対象であることは変わりないのに、自身の心のうちで占める位置はどうやら違う。その不思議をもうすこし解き明かしたくて、弟を撮り続けるとともに、彼氏の姿も並行して撮るようになっていった。

 やがて弟は実家を出て、彼氏は自分の夫になるという変化が訪れても、伊澤は両者を撮影し続けた。それぞれの写真を比べてみることで、ふたりそれぞれの「愛しさの理由」を探り当てようとでもしているのだろうか。