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ふたりの男性がそっくりに見えてくる
今展では弟の写真と夫の写真を、あまりはっきりとした区別を設けることなく、ランダムに並べて展示している。弟と夫は年齢こそ近いものの、顔の造作はさほど似ていない。それなのに、一枚ずつの写真に順に見入っていると、これは弟の姿? それとも夫のほう? と混乱してくる。なぜかひじょうに似通って見えるのだ。
その要因はおそらく被写体にあるのではなく、撮影者が被写体をどう見ているかに関わっている。ふたりへ注ぐ伊澤のまなざしが、かなり似たものなのではないか。それで写真に写った両者の姿が、区別できなくなっているのかもしれない。
深く愛する対象を長きにわたって追いかけた写真群が、人の感情の不可思議さを垣間見せてくれる。自分なら、何を撮る? これほど深く愛する対象があるだろうか? そんなことを考えながら、じっくり一枚ずつの写真作品と対話してみたい。