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商業作品には多くなかった百合ジャンルが……

 二次創作とは創作物に登場するキャラクターや世界観を利用して、 二次的に創作された小説や漫画、或いはグッズなどを指す言葉です。二次創作は「ファンアート」とも呼ばれていることから分かるように、原作のファンが作っており、多くの場合プロの作家ではない一般の方が作者です。

 私が「百合」を見つけた場所は、某大手掲示板に投稿された二次創作の小説を有志が纏めた、いわゆる「保管庫」と呼ばれる類のサイトでした。

 某掲示板に投稿していたのは 素性も背景も全く分からない人たち。そこにはもしかしたらプロの作家が息抜きで書いたものもあるかもしれないし、作家になろうとしている人、作家になれなかった人、作家になるつもりはなくただ作品が好きな人、そして、 二次創作群の素晴らしさに憧れて書き始めた人のもの。色々な人による作品が投稿されていたと思います 。

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 当時は男性キャラクターが殆ど登場せず複数の美少女キャラクターたちの日常で垣間見える友情や成長を描く青春群像劇が流行り始め、「日常系」と呼ばれました。これらの創作物が視聴者のイマジネーションを掻き立てるのか、美少女キャラクター同士の恋愛を描いた二次創作が数多く作られました。当時は百合を主題とした商業作品がそう多くはない状況の中で、百合ジャンルが思わぬところで発展していたのです。

©iStock.com

コメディ、シリアス、サスペンス、多種多様な作品の中で

 私が初めに出会ったのは月刊ゲーム雑誌『 コンプティーク 』で連載されている4コマ漫画『らき☆すた』(美水かがみ作)の二次創作たちでした。原作は、小柄でアニメやゲーム好きのオタクな少女、泉こなたが親友の柊かがみを始めとする友人たちなど周りを取り巻く人々とまったりとした穏やかな日々を過ごすという内容のもの。

「保管庫」には、『らき☆すた』 の本編そのままのコメディ調の作品、シリアスなキャラクター同士の恋愛もの、果てはサスペンスや ホラー 、 SF まで、多種多様な作品がありました。

 特に私の胸を打ったのは、 その中に投稿されていたとある作品でした。

 キャラクターが同性の親友への恋心に悩み、 友人たちと色々な壁を乗り越え、そして、 結ばれるという内容でした。カルトを脱会して以来数多くの百合作品も百合でない作品も見てきましたが、未だにそれ以上の物は見つからない程に素晴らしい傑作です。