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講義の合間など、他の信者から離れられるスキマ時間に

 カルト宗教にとって同性愛は悪魔によって堕落した人間が陥る最たるものであり、気持ち悪いと思うのは本来の堕落していない人間の品性からだと教えられ続けてきました。私はカルト宗教に所属している間、そうした教義に疑問を持ちながらも、曖昧にそれを信じるようなポーズを取り続けてきました。

 ですが、講義の合間など、他の信者から離れられるスキマ時間にガラケーを通して出会ったその作品に感動し、その教えは絶対に間違っていると確信を持つことが出来たのです。

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 カルト宗教を抜けて自由になった私は一般的な百合好きと同じく、百合漫画と百合小説を読み耽り、百合ゲームをプレイし、百合アニメと百合ドラマを見て、朝から晩まで百合の事を考えている状況が10年以上続いています。しかし、市場で出回っている百合に触れられるようになっても、私は二次創作を読んでいます。それは素晴らしい創作物や魅力的なキャラクターに出会った時、「物語のその先を知りたい」「もしこのキャラクターにこんな側面があったら?」というイマジネーションの飢えを満たしてくれるからかもしれません。

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名もない人たちが繋いできたイマジネーション

 カルト宗教は反社会的な集団だと世間一般では思われていますし、実際に反社会的な行いをすることがあります。しかし、厄介なことに、多くのカルト宗教は人の為に尽くす事や家族愛などといった道徳や社会的正義 、「大きなお題目」を掲げます。

 対して、私を救い出したのは、カルト宗教の教祖のように世界中で尊敬を集めて人々を平伏させたものでも、社会によって認められたものでもありませんでした。元カルト信者の私の目を覚まさせたのは、名前のない人たちが作った名前のない名作たちだったのです。

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 新たに百合作品を知りたい方には肩透かしを食らうような記事だったかもしれません。もし、そんな方がいらっしゃるなら、別の誰かが話題にしている最近の百合作品をお薦めします。

 今はかつて私が百合に出会った頃よりも多くの名作が世に出ています。それはきっと私が目にした名もない人たちが繋いできたイマジネーションが今この時まで残っているからでしょう。今の私はその名のない名作たちを目指して、自分も細々と名もない百合作品を作っています。 かつて出会った名作からは遠くとも微かな繋がりを感じながら。