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「カレーブームにどう乗っかるか問題」水野仁輔と小宮山雄飛のカレー談義 #1

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「札幌スープカレー」は勝手につけられた名前だった!?

水野 もともと、インドにもタイにもスリランカにも「カレー」っていうものはありませんからね。スパイス料理をいろいろ食べていただけなのを、ヨーロッパの人間が勝手に「カレー」と名付けただけ。それが最近また、カレーであろうがなかろうが関係ないと言い始めた、みたいなことで。

小宮山 勝手ですよね。たとえば日本でずっと「天丼」って呼んでいたものが、海外で突然違う名前で……たとえば「ギャモン」って全世界で呼ばれるようになった、みたいなことでしょ?(笑) 韓国のビビンバも「ギャモン」で天丼も「ギャモン」、みたいにひとくくりにされたりして。

水野 そうそう。そこでこだわりを捨てられる店は「ギャモン」に乗っかって大化けする。

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小宮山 エビギャモンとかアナゴギャモンとか(笑)。そう考えるとものすごく変な話だけど。

水野 でも、ご当地カレーの世界ではある話で、代表格は札幌スープカレー。札幌にはもともとスープカレー的なお店は何軒かあったんですよね。これを誰かが「スープカレー」でくくった時に、札幌の人たちは「いいよ。別にスープカレーで」って、わりとスッと乗ったんですよ。何軒か乗らなかったところも僕は知ってるけど。で、今は大阪のスパイスカレーです。あのスパイスカレーも、大阪の人たちはこれに乗るか乗るまいか、ちょっと逡巡があると思うよ。

小宮山 確かにね。

水野さんの「ドライキーマカレー」(毎月スパイスセットが届くサービス「AIR SPICE」より)

水野 大阪では、ワンプレートの盛り合せを限定的に「スパイスカレー」って呼んでるけど、あのスタイルをすべて「スパイスカレー」でくくられた時に、どうするかですよ。

小宮山 スパイスカレーって言わないでやってきた人が、「あなたはスパイスカレーですよ」って言われた時にそれを受け入れるかどうか。