文春オンライン

緊急事態宣言は1週間遅かった。なぜ専門家会議は「命」より「経済」を優先したのか?

WHO事務局長上級顧問・渋谷健司氏【緊急再寄稿】

2020/04/07

(6)官民で叡智の結集を

 4月5日、エリザベス女王は国民への演説をした。女王になってから68年、実に4度目の異例の国民への演説である。女王の凛とした覚悟と今を忍び皆で乗り切ろうという国民へのメッセージは感動的であった。女王は、さらに「自律と不屈の心」が大事であり、いつか「この困難に自分がどう対応したのか振り返ったとき、誇らしく思えるようになる」ことを願っていると語りかけた。そして、第2次大戦の時の応援歌「We will meet again」(またお会いしましょう)というフレーズを最後に用いた。英国では、すべての国民が、新型コロナウイルスとの戦いが戦争に匹敵するくらいの極めて困難な状況であること、そして、一致団結して乗り越えなければその克服は難しいことを改めて肝に銘じる機会となった。

“戦時下”のような状態のロンドン

 緊急事態宣言が遅れてしまったことを嘆いてる暇はない。日本のシステムは「想定内の調整」は完璧だ。しかし、今はまさに未曾有の危機であり、「想定外を想定」して、日本の叡智を結集して、走りながら次々に先手を打っていくしかない。筆者のメンターの一人であり、元全米医学アカデミー所長のハービー・ファインバーグ氏が医学雑誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に「Crush the Curve(感染カーブをぶっ壊す)」というタイトルで、今米国がやるべきことを6つ述べている。それは、

1. 統制の取れた指揮系統の確立
2. 何百万もの検査の実施
3. 医療従事者への防護服の支給
4. 患者を5グループに分け対応
5. 国民を鼓舞し動員
6. リアルタイムの基礎研究

パンデミックのタイムズスクエア(ニューヨーク) ©iStock.com

 そして、これはそのまま我が国が実施すべきことでもある。

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 今、政府の対策本部は混乱の極致であろう。初期の対策開始から刻々と変わる状況の中で疲労もピークにきているはずだ。フェーズが変わりクラスター対策からの転換が必要な今、本部事務局を官民連携にしたらどうだろうか。課題の洗い出しは民間コンサルに任せ、実証はキレキレの学者とエンジニアが行い、優先順位決定はインパクト重視の投資家目線、そして、ロジやオペレーションのプロによる実行案。もちろん、全体と制度とのすり合わせを役所がやる。若手の優秀な日本人は国内、そして、世界にたくさんいる。テレワークメインで24時間365日、世界のどこからでもアクセスして国難を乗り越えるのはどうだろうか。今は未曾有の国家危機、やればできるはず。もちろん、合い言葉は「Crush the Curve」だ。

緊急事態宣言は1週間遅かった。なぜ専門家会議は「命」より「経済」を優先したのか?

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