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〈その時、呼吸器内科の主任医師がドアの前を通ったので、なかに呼び入れて「私たち(救急科)を受診した患者があなたのところ(呼吸器内科)に入院している。見て、これが見つかった」とカルテを見せた。

 彼はSARS治療の経験者だったので、すぐさま「これは大変だ」と言った。

 私も事の重大さを再認識した。

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「もしかすると面倒なことになるかも」

 その後、同期生にも、このカルテを送信した。「SARSコロナウイルス、緑膿菌、46種口腔・気道常在菌」という箇所を赤い丸で囲んだ。救急科の医師グループにもウィーチャットの画像共有アプリで発信し、皆に注意を喚起した。

 その夜、私が赤丸を付けたカルテのキャプチャ画像が、さまざまなウィーチャット・グループに溢れるようになった。李文亮医師がグループ内に発信したのもそれだった。

 私は「もしかすると面倒なことになるかも」と感じた〉

李文亮医師の死を悼み、献花する市民 ©AFLO

 原因不明の肺炎患者のウイルス検査報告を入手したアイ・フェン医師が、「SARSコロナウイルス」と書かれた箇所を赤丸で囲み、大学同期の仲間に送信したキャプチャ画像が、「警鐘」の発端となったのである。

外部に情報を公表してはならない

「もしかすると面倒なことになるかも」というアイ・フェン医師の予感は当たった。

〈12月30日午後10時20分、病院を通じて武漢市衛生健康委員会の通知が送られてきた。「市民のパニックを避けるために、肺炎について勝手に外部に情報を公表してはならない。もし万一、そのような情報を勝手に出してパニックを引き起こしたら、責任を追及する」という内容だった。

 私は恐くなった。すぐにこの通知も同期生に転送した。

 約1時間後、病院からまた通知が送られてきた。再度、情報を勝手に外部に出すなと強調していた。

 1月1日、午後11時46分、病院の監察課(共産党規律検査委員会の行政監察担当部門)の課長から「翌朝、出頭せよ」という指示が送られてきた〉