「電子化希望ランキング」で常にトップの東野作品
この中でも、国内最大の部数290万部を誇るのが、『容疑者Xの献身』だ。直木賞受賞作であり、国内ミステリーランキングを総なめに! 海外でも、最も権威があるとされるアメリカのエドガー賞にノミネートされて話題となった。
同作はガリレオシリーズ初の長編。天才数学者が、命がけの純愛のために計画した「完全犯罪」を巡り、物理学者であるガリレオこと湯川学と対決。無償の愛がもたらす結末に、慟哭必至の傑作長編だ。
「ガリレオシリーズは、最新作『沈黙のパレード』を含めて全9作品ありますが、あくまでも今回の電子書籍化は、『最初で最後かもしれない』特別解禁。シリーズ2作品目以降の電子化は未定なので、町の書店で紙の本を買ってほしい、というのが著者の考えです」(同担当編集者)
「東野圭吾、電子書籍解禁」のインパクトを、文藝春秋の電子書籍担当者が語る。
「東野圭吾さんは電子化はしないと公言されてきたので、今回の電子化プロジェクトの話を聞いたときには、にわかには信じられませんでした。
電子書籍の市場は、確実に伸びています。出版科学研究所のレポートによると、2019年の電子出版市場は前年比23.9%増となり、3000億円を突破しました。しかしながら、電子コミックが同29.5%増であったのに比べ、電子書籍(文字もの)は8.7%増になっています。
これは、『ベストセラーの未電子化』が残っているということが要因の一つでした。電子書籍に興味を持った人が、電子書店に来たとしても、『なんだ、あの作品がないんだ。電子書籍はまだまだだな』と感じる人がある程度いたと考えられます。
東野さんの作品は、電子書店の電子化希望ランキングで常にトップ。電子書籍ユーザーにとっても、業界にとっても、東野作品の電子化は悲願だったわけです。これを機に電子書籍を読んでみようと思う方も多いはず。確実に電子書籍の裾野を広げると思います」
このほかの作品について、映像化に絞って紹介すると、『疾風ロンド』(実業之日本社)は、阿部寛、大島優子ら豪華俳優陣で2016年11月に映画化された。『ダイイング・アイ』(光文社)は、2019年に三浦春馬主演でWOWOWで連続ドラマ化。『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(KADOKAWA)は、中国国内で1000万部を売り上げ、2017年には、山田涼介、西田敏行らの出演で映画化された。
『白夜行』(集英社)は、ドラマ、映画ともに大ヒットしたうえに、集英社文庫(売上)歴代No.1という記録的ベストセラー。『プラチナデータ』(幻冬舎)は、二宮和也、豊川悦司らの出演で映画化された。そして、『流星の絆』(講談社)は、2008年、TBS系列で二宮和也、錦戸亮、戸田恵梨香らの出演で連続ドラマ化され、最高視聴率22.6%を記録している。
いずれから読んでも、つまらないということは、「絶対にありえない」はずだ。自宅で過ごすことが求められている今、映画やゲームにくわえて、東野圭吾のエンタメ小説を電子書籍で楽しんでみてはどうだろうか。